最高裁の判決・決定に対しても不服申立できるの? 訂正申立て・異議申立てについて

刑事訴訟に関するニュースでは、たまに「最高裁の判決に対して訂正を申し立てた」「最高裁の決定に対して異議を申し立てた」という記事があります。

「再審」という例外的な事態を除けば、最高裁の判断は、三審制の最後(上告審)の判断、つまり司法における最終判断のはずです。
それにもかかわらず、最高裁の判断にさらに不服を申し立てることができるのでしょうか。

今回は、刑事事件の最高裁判決・決定に対する、訂正申立て・異議申立てについて解説します。
(なお、民事事件の最高裁判決・決定に対してはこのような制度はありません)

実例

訂正申立て・異議申立てが行われた事例を見てみましょう。

訂正申立てを行った事例

鳥取連続不審死事件で男性2人への強盗殺人罪などに問われた元スナック従業員(中略)被告(43)の死刑判決が確定した。
1、2審に続いて死刑とした最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は、上告を棄却した最高裁判決に対する被告の訂正申し立てを退ける決定をした。

鳥取連続不審死 元スナック従業員(中略)被告の死刑確定 - 産経ニュース(2017年8月26日)より
(タイトル一部修正)

この件では、一審・二審を通じて有罪判決を受けた被告人が最高裁に上告したところ、最高裁では上告を棄却する判決が下されました。
被告人は、その判決に対して訂正申立てを行っていましたが、棄却されたようです。

異議申立てを行った事例

岐阜県美濃加茂市の前市長が受託収賄罪等に問われた事件では、第一審は無罪判決、控訴審(二審)は逆転有罪判決となり前市長が上告していましたが、今年2017年12月11日、最高裁は前市長の上告を棄却する決定を下していました。

本日の新聞では、前市長は最高裁の決定に対し異議を申し立てたことが報じられています。

汚職事件で受託収賄罪などに問われ、14日付で辞職した岐阜県美濃加茂市の(中略)前市長(33)は18日、前市長側の上告を棄却した最高裁第3小法廷の決定を不服として異議を申し立てた。申し立てが退けられると、有罪が確定する。

上告棄却決定に異議 前美濃加茂市長:日本経済新聞(2017年12月19日)より

こちらは、最高裁では上告を棄却する決定が下されていたところ、前市長がこの決定に対して異議申立てを行ったという事例です。

 

最高裁の「判決」と「決定」

最高裁が上告を認めないとき(=上告を棄却するとき)の判断形式は、「判決」と「決定」の2種類があります。
そして、不服申立ての手段は最高裁の判断が「判決」なのか「決定」なのかによって異なります。

最高裁に上告するには、単に高裁の判断に不服があるというだけではダメで、高裁の判断が、憲法や過去の最高裁判例に違反しているなどの理由がなければなりません。
そこで、上告する場合には、例えば「高裁判決は憲法●●条に違反している」などと主張するわけですが、審理の結果、

・その主張が明らかに憲法違反の主張になっていない場合→上告棄却の決定
・憲法違反の主張ではあるが、審理の結果、憲法違反ではないとなった場合→上告棄却の判決

となります。

ほかにも細かいパターンがありますが、おおよそこのような例となります。

 

最高裁の判決・決定に対する不服申立方法

判決の場合

刑事訴訟の上告審判決に対しては訂正申立てを行うことができます。

(以下、条文は全て刑事訴訟法を表します)

第415条
第1項 上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正することができる。
第2項 前項の申立は、判決の宣告があつた日から十日以内にこれをしなければならない。
第3項 上告裁判所は、適当と認めるときは、第一項に規定する者の申立により、前項の期間を延長することができる。

とはいっても、あくまで「訂正」ですから、それが認められるのは明らかな誤記などの場合に限られます。
実際にも認められることはまずありません。

なお、民事訴訟では上告審の判決は言渡しと同時に確定しますが、刑事訴訟では訂正申立ての制度があるため、上告審判決が確定するのは上記の期限を経過した時です(第418条)。

決定の場合

上告棄却の決定に対しては異議申立てを行うことができます(第414条、第386条第2項、第385条第2項)。

第385条
第2項 前項の決定に対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立をすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。

ただし、異議について審理するのは決定を下した裁判所ですから、異議が認められる可能性はほぼないものと思ってよいでしょう。

なお、異議申立ては、上告棄却決定の日の翌日から3日以内に行わなければなりません(第422条)。