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仮差押え・仮処分に関する不服申立手続について 即時抗告・保全異議・保全抗告とは

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広島高裁が12月13日、伊方原発3号機の運転差止めを認める仮処分決定を行ったことが話題になっています。

ただ、下記のニュース記事のように、記事の中では抗告(即時抗告)、保全異議、執行停止など、いろいろと法律用語が使われており、何だか伝わりにくいかと思います。
(それぞれの手続の意味はニュースの本質から離れるので、説明を省略しているのでしょうが)

四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐり、住民が求めた運転差し止め仮処分の抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、広島地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定をした。

(中略)

広島地裁では運転差し止めの訴訟も続いており、決定は訴訟で異なる判断が出る可能性をふまえ、差し止めを来年9月30日までと限定した。

仮処分はただちに法的な拘束力を持ち、今後の司法手続きで覆らない限り運転はできない。伊方原発3号機は今年10月から定期検査のため停止中で、来年1月予定の再稼働ができない可能性が高まった。四電は広島高裁に保全異議申し立てと仮処分の執行停止の申し立てをする方針だ。

伊方原発3号機、運転禁じる仮処分 阿蘇噴火の影響重視:朝日新聞デジタル(2017年12月13日付)

四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島市の住民らが求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、2018年9月30日まで運転を差し止める決定をした。

仮処分決定は直ちに効力が生じるため、決定が覆らない限り運転は再開できない。四国電は異議申し立てや決定の効力を止める執行停止の手続きを取る方針。

伊方原発の運転差し止め 広島高裁が仮処分:日本経済新聞(2017年12月13日付)

そこで今回は、そもそも仮処分とは何なのかも含め、仮処分(及び仮差押え)に対する不服申立手続である、即時抗告・保全異議・保全抗告とは何なのかについて解説します。

 

民事保全(仮差押え・仮処分)とは

民事上の争いは、最終的には訴訟手続により権利義務関係が確定され、その権利は強制執行により実現されます。

もっとも、訴訟手続が終わるまでには時間がかかります。
そのため、その間に相手方が財産を処分・隠匿してしまったり、争いの対象となっている物を処分してしまったりしてしまう可能性があります。
そうすると、勝訴判決をもらったとしても強制執行ができなくなってしまい、訴訟手続の意味がなくなってしまいます。

そこで、このような事態を防止するため、現状を保全するために認められたのが民事保全という制度です。
訴訟よりも簡略化された審理手続で、素早く決定を出すことができます。

民事保全には仮差押え仮処分があり、仮処分はさらに、係争物に関する仮処分と、仮の地位を定める仮処分に分かれます。

今回の原発差止めの仮処分は、これらのうち「仮の地位を定める仮処分」です。
この手続では、本体の訴訟(「本案」といいます)で主張している権利関係について、暫定的に認めることができます。

原発差止訴訟では、本案として原発の運転差止請求訴訟を起こしつつ、同時に同内容の仮処分を申し立てたようです。
今回は広島高裁で仮処分が認められたので、これにより運転は差し止められました。

 

保全命令に対する不服申立手続

仮差押えや仮処分の申立てが認められるためには、権利関係をある程度十分に説明でき、かつ保全を行う必要性が認められる必要があります。

審理の結果、これらの条件を満たしていると判断されれば、裁判所により仮差押命令または仮処分命令(あわせて保全命令といいます)が発令されます。
他方、不十分と判断されれば申立ては却下されます。

では、それぞれの場合にはどういった不服申立手続があるのか。
最初に申立てが認められた場合と、却下された場合に分けて解説します。

最初に申立てが認められた場合

※以下、最初に申し立てた側を「債権者」、申し立てられた側を「債務者」といいます。

最初に地裁に申立てを行ったケースでご説明しますと、地裁において保全命令が認められた場合、債務者は地裁保全異議を申し立てることができます。

保全異議の審理において、やはり保全命令は相当であるとされれば「認可」、相当でないとされれば「取消し」ということになります。

さらにこの決定に対しては、いずれの場合も高裁保全抗告を申し立てることができます。
保全異議の場合と同様、審理において保全命令が相当かどうかが判断されます。

保全抗告の決定に対しては、(憲法違反などの場合を除き)さらに不服申立てを行うことができません

最初に申立てが却下された場合

最初に地裁で保全命令が却下された場合は、債権者は高裁即時抗告を申し立てることができます。

即時抗告の審理において、同様に保全命令が相当かどうかを検討し、相当と判断されれば高裁が保全命令を発令します。
不相当だと判断されれば、即時抗告は却下され、却下された場合にはこれ以上不服申立てを行うことができません(憲法違反などの場合を除く)。

高裁で保全命令が発令された場合は、債務者は高裁保全異議を申し立てることができます。
この保全異議でもさらに保全命令が相当かどうかが審理されます。
保全異議の決定に対しては(憲法違反などの場合を除き)さらに不服申立てを行うことができません

伊方原発のケース

冒頭の伊方原発の運転差止めのケースでは、まず住民(債権者)が広島地裁に運転差止めの仮処分を申し立て、広島地裁では申立てを却下したため、住民は広島高裁に即時抗告をしました。
その即時抗告で運転差止め仮処分が認められた、というのが今回のニュースです。

この決定を受けて、四国電力(債務者)が同じく広島高裁に保全異議を申し立てることになります。

 

保全の分野では、このように即時抗告、保全抗告、保全異議など紛らわしい用語が登場します。
不服申立ての手続という意味では共通していますが、手続の点で細かい違いがありますので注意が必要です。


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