不動産の管理 不動産登記

所有者不明土地が引き起こす問題――土地の「所有者不明」問題②

投稿日:2017年9月27日


前回は、なぜ「土地の所有者が不明」という事態が起こるのかについてでした。

長期にわたって相続登記手続が放置されたため、元の所有者が亡くなった当時の情報が分からず、したがって現在の所有者(相続人)が誰だか分からない――というのが一般的なケースです。
所有者が確定できないと、当然その土地に関して何らかの交渉を行うことができなくなります。

また、仮に何らかの手がかりがありそこから相続人を確定しうるとしても、数代にわたって相続を繰り返した結果、相続人が数十人、時には100人を超えてしまうこともあります。
交渉を行うにしても相続人全員の同意を得る必要がありますので、このうち一人でも行方不明者がいれば話は進みません。

このような事情のため、現在各地で以下のような問題が生じています。

公共事業・開発行為の障害

道路の整備や、治水・防災関連事業、市街地再開発事業などの公共事業のために、民間の土地を用地として取得する必要がある場合に問題となります。

国や市町村が用地を取得するにあたっては、代替地や補償金などの条件について土地の所有者と話合いを行うことが不可欠です。
しかし、事業に必要な土地の一部が所有者不明であれば、その土地を取得することができず事業が進みません。
(もちろん、最終的には強制収用を行うわけですが、結果的に多くの時間・費用がかかることになり、断念することもあります)

こうして事業計画が数年単位でストップしてしまうのです。

民間業者が行う山林や宅地の開発行為においても同様です。
後で述べるように、対策がないわけではないのですが、やはり多くの時間・費用がかかります。
そのため、民間業者であればあえてそのような土地には手を出さないことも考えられます。

結果として、所有者不明の土地だけでなく、その周辺の土地も含めて有効利用されることなく、また必要な整備もされないままになってしまいます。

土地の危険対策

土地の所有者が不明のため、その土地に必要な改修などができず危険な状態になることもあります。

例えば、がけ地などの法面(のりめん。斜面部分のこと)部分の所有者は、多くの場合、がけ地の上の土地の所有者と同じです。
したがって、がけ地の上の土地が所有者不明である場合には、多くの場合、法面部分の所有者も不明ということになります。

ところで、法面の所有者は、がけ地に擁壁が設置されている場合はもちろん、そうでない場合であっても、その擁壁やがけ地が崩れないよう適切に維持・管理をする必要があります。
擁壁やがけ地が適切に維持・管理されていなかったことにより崩落して、下の土地・家屋などに損害を発生させた場合、法面の所有者は損害賠償責任を負うことになっているからです。
(民法717条。これは過失がなくても発生する責任(無過失責任)です。詳細はこちら

しかしながら、所有者が不明となると擁壁などを維持・管理する人がいないことになります。
第三者が勝手に改修工事をするわけにもいきません。

また、万一のことがあった場合、責任を追及する相手も不明です。

危険性の高いがけ地については、市町村としても助成金を出すなどして擁壁の設置・改修を進めさせるようにしていますが、そもそも所有者がいなければ市町村としても対策のとりようがありません。

空き家問題

さらに、所有者不明という問題は、これまた近年話題の「空き家問題」とも共通します。

空き家問題については別途考察しますが、結局、この問題も「相続登記手続が行われなかったため現在の所有者が不明」という点が出発点になっていることが多いです。
土地というより建物の問題ですが、構造は同じです。

上記で挙げたがけ地の例と同様、老朽化した建物が放置された結果、周囲に危険を及ぼしかねない状態になっているにもかかわらず、所有者が不明のため対策ができないという問題が生じています。
建物はいつか必ず老朽化(最終的には崩壊)しますので、周囲の住民にとっては心配です。

空き家問題については「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定され2015年2月に施行されましたが、「特定空家等」に認定されなければとりうる手段がないこと、また認定されたとしても代執行(市町村が建物を取り壊すこと)を行う場合には事実上その費用を市町村が負担せざるを得ないことなどから、同法が抜本的な対策としては機能していないのが現状です。

その他の問題

土地の所有者が不明ということは、すなわち土地を管理する人がいないということです。
したがって、その土地は荒れ放題になってしまいます。

住宅地や市街地などで、雑草が生い茂っているような土地をご覧になったこともあるかと思います。
(単に所有者が管理をサボっているだけ、というケースもありますが)

このような土地は、美観や衛生上の問題もさることながら、往々にしてゴミや廃棄物の投棄場所になってしまいます。
とはいえ、これをどうにかできるのは所有者だけですから、その所有者が不明であれば周囲の住民や市町村はやはり何もできません。

対策はないのか

土地(建物)の所有者が不明となることで、全国的に以上のような問題が起こっています。

そして、前回の記事でもお伝えしましたが、その面積は全国の土地の約2割にのぼると推計されています。
主な原因が相続登記手続を放置したことにある以上、このままでは今後、所有者不明の土地がさらに増えていくことは容易に予測できます。

新聞やニュースでたびたび取り上げられるわけですね。

国や地方自治体も、これを抜本的に解決できるような対策を検討していますが、まだまだ形にはなっていません。

では、現行の法制度ではどのような対策ができるのでしょうか。
次回は対策ついて考察します。


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