あおり運転の厳罰化 改正道路交通法・改正自動車運転処罰法の条文を詳細に解説します
2020年6月に入り、立て続けに道路交通法及び自動車運転処罰法の改正法が成立しました。
いずれも、あおり運転の罰則化・厳罰化を目的としたものです。
今回は、改正により道路交通法・自動車運転処罰法がどのように変わったのか、改正前後の条文をもとに詳しく解説します。
目次
報道の概要
以下に報道されていますように、6月2日に改正道路交通法が、5日に改正自動車運転処罰法が、それぞれ成立しました。
「あおり運転(妨害運転)」を新たに罪と定めることを盛り込んだ改正道路交通法が2日、衆院本会議で可決、成立した。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。高速道路でほかの車を停止させるなどした場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金とした。行政処分は一度で免許取り消しとなる。早ければ今月末に施行される。
※細かいですが、「衆院本会議で可決、成立した」とあるのは、この法案は先に参議院で審議されたためです。
あおり行為など妨害運転を厳罰化する改正自動車運転死傷処罰法が5日、参院本会議で可決、成立した。走行する車の前で停車する行為も、危険運転として処罰の対象に加えられた。けがをさせた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1~20年の懲役となる。7月に施行される見通し。
なお、道路交通法の今回の改正は、高齢ドライバー対策とあおり運転対策の2本立てですが、以下では後者のあおり運転対策に絞って解説します。
また、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」は自動車運転処罰法や自動車運転死傷処罰法などと略して呼ばれますが、以下では「自動車運転処罰法」と表記します。
道路交通法の改正内容
あおり運転に関しては、117条の2・117条の2の2の改正がメインです。
もともと違反とされている10種類の行為につき、
- それらの行為を、他の車両等の通行を妨害する目的で、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法により行った場合
→3年以下の懲役または50万円以下の罰金 - 上記の行為を行った結果、高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合
→5年以下の懲役または100万円以下の罰金
とされました。
後述しますが、もともと違反とされている行為について特別な場合に刑を加重したというものであり、特に「あおり運転」などとして新たな行為類型を加えたわけではないことに注意です。
概要
先に117条の2の2について。次のとおり第11号が新設されました(現行の第10号と第11号の間に新たに挿入され、現行の第11号は第12号に繰り下がりました)。
第117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
⑪ 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為
新たに10個の類型が定められました。
(ちなみに、省略した第1号~第10号には無免許運転や酒気帯び運転、過労運転などが定められており、新設された類型はこれらと同じ重さの罪と扱われることになります。)
順番は前後しますが、次に117条の2。新たに第6号が新設されました。
第117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
⑥ 次条第十一号の罪を犯し、よつて高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者
この「次条第十一号」とは、前述した117条の2の2第11号のことです。
要するに、117条2の2第11号の行為を行い、さらに「著しい交通の危険を生じさせた」場合には刑が加重されることになっています。
(ちなみに、省略した1号~5号には酒酔い運転や薬物使用運転などが定められて定められており、新設された類型はこれらと同じ重さの罪と扱われることになります。)
以下、詳しく見ていきましょう。
新設された違反類型1(117条の2の2第11号)
前述のとおり、新設された11号では「他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者」とあり、イ~ヌの10類型を定めています。
ここで定められているイ~ヌの10類型は、従来から違反行為とされているものです。
今回の改正では、これらの違反行為を、他の車両の通行妨害目的で、かつ交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行った場合に、従来よりも重い罰則で処罰できるようになりました。
※「通行を妨害する目的」とは、衝突を避けるための回避措置を相手方にとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図している状態をいいます。
つまり、今回の改正では「あおり運転」という類型を完全に新設したものではなく、従来から定められている違反行為をもとに要件を絞って、かつ罰則を引き上げたものといえます。
(3年以下の懲役または50万円以下の罰金。無免許運転や酒気帯び運転、過労運転と同じ重さです。)
10個の類型について、条文をもとに詳しく見ていきましょう。
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
センターラインからはみ出して走行する行為。もちろん逆走の場合も含みます。
ただし、当該道路が一方通行の場合や、他の車両を追い越す場合など例外があります(5項)。
あおり運転の事例では、反対車線の車に対するあおり行為として行われることがあります。
第17条(通行区分)
4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
やむを得ない場合以外の急ブレーキはもともと禁止されています。
あおり運転の事例では、(後記「ニ」とあわせて)直前に割り込んで急ブレーキをかけるというケースがよく見られますね。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第24条(急ブレーキの禁止)
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
これもあおり運転の事例では典型的ですね。
後ろにピッタリ張り付くような行為も、もともと禁止されています。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第26条(車間距離の保持)
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
要するに、横の車線に無理に割り込むような行為です。
あおり運転の事例では、前記「ロ」とあわせてこの後急ブレーキをかけることがよくありますね。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第26条の2(進路の変更の禁止)
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ここで禁止しているのは、左側からの追越しや、無理な追越しです。
28条1項では、他の車を追い越す際には原則として右側から追い越さなければならないとされています。
また、右側からの追越しであっても、周囲の状況に十分注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければなりません(同条4項)。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第28条(追越しの方法)
1 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
(中略)
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ここで禁止しているのは主にハイビームについてです。
あおり運転の事例で想定されるのは、後ろからのパッシングですね。
第52条(車両等の灯火)
2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
知らない人も多いかもしれませんが、みだりにクラクションを鳴らす行為はもともと禁止されています。
第54条(警音器の使用等)
2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
70条は交通違反の一般条項的な規定であり、一般的に危険な運転行為を禁止するという概括的な規定です。
他の規定には当たらないが危険や悪質な運転行為である、という場合には70条が適用されることがあります(刑事罰を定める法律でこのような概括的な規定があるのは珍しいですが)。
あおり運転の事例では、幅寄せなどはこの規定が適用されます(初心者マークを付けてる車などに対する幅寄せは明文で禁止されています(71条5号の4)が、それ以外の幅寄せについては規定がないため)。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
次の「ヌ」とともに、高速道路での違反行為です。
あおり運転の事例では、前に割り込んで減速するようなケースがありますね。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第75条の4(最低速度)
自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道(政令で定めるものを除く。)においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあつてはその最低速度に、その他の区間にあつては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為
高速道路において車を停止することはいうまでもなく非常に危険な行為であり、原則として禁止されています(もちろん渋滞などの場合は除く)。
あおり運転の事例では、2017年に東名高速道路で起きた事件などのように他の車の前に割り込んで自車を停止するケースがありますね。
(※後述のとおり、死傷事故を起こせば危険運転致死傷罪の対象にもなり得ます。)
第75条の8(停車及び駐車の禁止)
1 自動車(これにより牽引されるための構造及び装置を有する車両を含む。以下この条において同じ。)は、高速自動車国道等においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる場合においては、この限りでない。
(以下略)
新設された違反類型2(117条の2第6号)
こちらは、新設された類型を加重するものです。
再度、条文を見てみましょう。
第117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(1号から5号まで略)
⑥ 次条第十一号の罪(※注:前記の第117条の2の2第11号)を犯し、よつて高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者
前記(新設された違反類型1)で説明した、新設された10の類型(117条の2の2第11号)の行為を行い、その結果として高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には刑が加重されます。
(5年以下の懲役または100万円以下の罰金。酒酔い運転や薬物使用運転と同じ重さです。)
前記(新設された違反類型1)では、他の車両の通行妨害目的で、かつ交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行った場合に罰則対象となるのに対して、こちらは、それに加えて実際に「道路における著しい交通の危険」を発生させたことが要件となっています。
「道路における著しい交通の危険を生じさせた」とは、「高速自動車国道等において他の自動車を停止させ」という要件が並列されていることから分かるように、これと並ぶような重大な危険(いつ死傷事故が起こってもおかしくないような危険)を生じさせた場合、と考えられます。
行政処分
法律とともに施行令も改正され、違反点数については前記違反類型1は25点、違反類型2は35点とされました。
25点というのは一般違反行為(施行令別表第2-1)のMAXで、無免許運転、酒気帯び運転(呼気0.25mg/L以上)、過労運転等、共同危険行為等禁止違反(暴走行為)と並ぶ重さです。
前歴がなくとも1回で免許取消し、かつ欠格期間は2年(2年間は免許の再取得ができない)となります。
35点というのは特定違反行為(施行令別表第2-2)のうち酒酔い運転、麻薬等運転、救護義務違反(ひき逃げ)と並ぶ重さです。
(ちなみに、これより重い類型は運転傷害や運転殺人、危険運転致死傷のみです。)
前歴がなくとも1回で免許取消し、かつ欠格期間は3年となります。
自動車運転処罰法の改正内容
こちらは危険運転致死傷罪について定めた同法2条が改正されました。
危険運転致死傷罪は、一定の危険運転行為の結果、人が死傷した場合に成立する犯罪です。
改正後の条文は以下のとおりです(太字による強調は筆者)。
第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
① アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
② その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
③ その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
④ 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑤ 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
⑥ 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
⑦ 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑧ 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第5号と第6号が新設され、これに伴い旧第5号と第6号の号数が繰り下げられました。
第1号から第8号までの行為を行い、それぞれ、
- 人を負傷させた場合は15年以下の懲役
- 人を死亡させた場合は1年以上20年以下(刑法12条1項)の懲役
に処せられます。
なぜ改正された?
あおり運転行為に関しては、既に第4号で定められています。
第4号には「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」とあり、典型的には、走行中の急な割込みや幅寄せ、後方からのあおり行為が対象です。
あおり運転に関してはこの第4号の規定で対応できそうな気もしますが、なぜ新たに第5号と第6号が加えられたのでしょうか。
それは、第4号には「重大な交通の危険を生じさせる速度で」という要件があるためです。
この規定は、走行しながらの割込みや幅寄せ行為を想定して作られたもので、自動車を停車させる行為は文言上含まれません。
あおり運転の事例で、高速道路上で相手の車を停車させるような行為は危険性が非常に高いため、このような行為を明確に処罰範囲に含めるために第5号と第6号を加えたわけです。
※2017年の東名高速道路での事件では、被害者を高速道路上に停車させたことがその後の死傷事故につながりました。しかし、事故の時点では車は止まっていたわけですから、「重大な交通の危険を生じさせる速度で」運転したとはいえません。
そこで、この事件では危険運転致死傷罪が適用されるかどうかでかなり争われました(結果的に一審・二審では適用を認めましたが、2020年6月現在も訴訟は続いています)。
第5号の類型
第5号の条文をもう一度見てみましょう。
車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
典型的には、走行中の車の前に割り込んでブレーキをかけるような行為です。
「通行を妨害する目的」とは、前述のとおり、衝突を避けるための回避措置を相手方にとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図している状態をいいます。
罰則の対象となる行為は、走行中の車の前方で停止する行為のほか、走行中の車に「著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為」です。
具体的には、割込みや幅寄せのほか、後方にぴたりと付いてあおる行為などです。
なお、「走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)」とあるように、相手方がある程度の速度で走行している場合に限られます。
ここでいう「重大な交通の危険が生じることとなる速度」とは具体的状況に応じて判断されますが、大幅なスピード違反である必要はなく、時速20~30km程度であればこれにあたると考えられています。
以上のような行為の結果、人を死傷させれば危険運転致死傷罪が成立します。
第6号の類型
第6号の条文をもう一度見てみましょう。
高速自動車国道……又は自動車専用道路……において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
典型的には、高速道路上で走行中の自動車の前に割り込んでブレーキをかけるなどして、停止させるような行為です。
まさに2017年の東名高速道路での事件のような行為が対象とされています。
東名高速道路のような高速自動車国道のみならず、首都高のような自動車専用道路も対象です。
「通行を妨害する目的」や「著しく接近することとなる方法で自動車を運転する」の意味は第5号と同じ。
ただし、第6号の場合は、実際に相手を停止または徐行させることが要件となっています。
以上のような行為の結果、人を死傷させれば危険運転致死傷罪が成立します。
行政処分
危険運転致死傷に関する行政処分については特に改正はありません。
死亡の場合は62点、傷害の場合は程度に応じて45点~55点です。
前歴がなくとも1回で免許取消しになり、欠格期間は死亡の場合は8年、傷害の場合は5~7年です。