法務一般

保釈とはどんな制度?保釈金とは?保釈中に逃亡した場合は?

投稿日:2019年7月9日


最近、日産自動車元会長のゴーン氏の事件や、芸能人の薬物事件について、保釈制度が話題に上ることが多いですね。

ゴーン氏ノー変装で再保釈 計15億円納付 妻・キャロルさんと面会制限も - FNN.jpプライムオンライン(2019年4月25日付)

また、先月には保釈されていた被告人が実刑判決を受けた後に逃亡した事件も起こりました。

「多大な不安与えた」 横浜地検検事正、男逃走で謝罪 :日本経済新聞(2019年6月23日付)

保釈は、刑事事件を扱う弁護士にとっては非常に身近な制度です。
しかし、法律家でない方から話を聞くと、保釈制度について意外と正確に知られておらず、制度への疑問が多いようです。
「そもそも、なぜ高いお金を払ってまで外に出たいのか?」
「おとなしく拘置所に入っていればマスコミに騒がれることもないし、反省している態度を示せるのに」
「どうせ刑務所に入るのにわざわざお金を払ってまで外に出て何がしたいのか?」
――といった具合です。

また、保釈金は原則戻ってくるということを知らない方も多いようです(実際に、99%以上の事例では全額戻ってきています)。

そこで今回は、
 保釈とは何のための制度なのか?
 保釈が認められる割合は?
 保釈金とは?
 保釈金は戻ってくるのか?
 保釈中に逃亡した場合はどうなるのか?
など、基本的な内容について解説します。

 

そもそも保釈とはどういう制度か

保釈とは、勾留されている被告人について、保証金を納付させて暫定的にその身柄拘束を解くことをいいます。
簡単にいうと、担保となるお金を納めさせ、万一被告人が逃げたりした場合には取り上げる、という脅しをもって被告人を釈放させる制度です。

上記で「勾留されている」「被告人」と表記しているとおり、勾留(身柄拘束)をされていることと、起訴された後(被告人)であることが前提です。
起訴前の段階(被疑者)では保釈は認められません。

保釈制度の目的

では、保釈とは何のために認められている制度なのでしょうか。

「身柄拘束されている人を何のために釈放する必要があるのか?」という疑問をお持ちの方も多いかと思いますが、実は、法律の規定からすればそれは逆です。

というのは、有罪判決が確定するまでは「無罪推定の原則」が適用されますから、犯罪の嫌疑をかけられている人であっても、そもそも身柄を拘束されないというのが法律上の原則だからです。
裁判で有罪判決(実刑判決)を受けるまでは、今までどおり社会生活を送れますし、弁護人の事務所で裁判の打合せを行うこともできます。

なお、犯罪を行った(あるいはその疑いのある)者は原則として逮捕・勾留されるものだと思っている人も多いでしょうが、そうではないのです。

ただ、そうはいっても何でもかんでも任意の捜査にするわけにはいかず、逃げたり証拠隠滅をしたりする場合も多くあり、そのような事態は防がなければなりません。
そこで、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合など(身柄拘束をする特別の必要性がある場合)に限り、例外的に身柄拘束が認められているのです。
(逮捕や勾留については、別記事で詳しく解説します。)

このように、身柄拘束とは例外的な状態なのです。
保釈とは、いわばこの例外的な状態(身柄拘束されている状態)を、本来の原則的な状態(身柄拘束されていない状態)に戻すための手続、という位置づけなのです。

保釈が認められるための要件

法律上は、刑訴法89条(※)に該当しない場合には保釈を許可しなければならないことにはなっていますが(これを「権利保釈」といいます)、話はそう簡単ではありません。
ほとんどの場合、検察官からは4号の事由に該当する(証拠隠滅のおそれあり)と反論され、この点が争点となります。
弁護人としても、この点をいかにクリアするかが悩みどころです。

そうはいっても、現実の運用では「証拠隠滅のおそれがない」と認められるためのハードルは非常に高く、上記の権利保釈が認められることはまずありません。
そこで、実際には、裁判所の裁量による保釈(これを「裁量保釈」といいます)を求めることになります。
証拠隠滅や逃亡の可能性が低いことや、身元引受人による監督が十分であること、勾留されたままでは被告人の実生活上の不利益が大きい(会社を解雇されてしまうなど)こと、病気により通院の必要性が大きいこと、などを主張して裁量保釈を求めます。

※刑事訴訟法89条では、保釈の請求があったときは、次の場合を除き保釈を許可しなければならないと定められています(実務上「権利保釈」といいます)。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い 怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

※上記の「権利保釈」が認められない場合でも、事情によっては裁判所の裁量で保釈を許可することもあり、これを実務上「裁量保釈」といいます(刑事訴訟法90条)。通常、弁護人はこの「裁量保釈」を狙います。
刑事訴訟法90条では「裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と定められています。

保釈が認められやすい事案・認められにくい事案

法律上の要件は上記のとおりですが、当然ながら、保釈が認められやすい事案と、そうでない事案はあります。
例えば、被告人に定職があり住所不定でないような場合で、犯罪事実を認めていれば(特に重い罪でなければ)8割以上は保釈が認められるのではないでしょうか(あくまで私の体感ですが)。

これに対し、犯罪事実を否認している場合には途端にハードルが上がります。
その他、重い罪で起訴されている場合や、共犯者がいる場合、被害者が顔見知りの場合、犯罪自体が複雑な場合などもハードルが上がります。
要するに、証拠隠滅(口裏合わせを含む)が行われそうだったり、被告人が逃げそうだったりする場合には、それだけ身柄を拘束しておく必要性が高いためです。

この点は、後述のとおり保釈金額との兼ね合いにもなります。

なお、否認しているから保釈が認められにくい、という実務上の扱いについては特に多くの批判がなされています。
「自白しない限り外に出してもらえない」ということにつながりますので、「人質司法」などといわれていますよね。
実際、日産のゴーン氏の事件では、海外からの批判(日本の人権意識は中世並み、など)も多く寄せられました。

保釈が認められる割合(統計)

平成29年度司法統計の第32表によれば、全国の地裁では、勾留された被告人が38,028名で、そのうち保釈された(正確には、保釈決定後に釈放された)のが11,589名ですから、勾留された被告人のうち約30.5%が保釈されているようです。
ただし、全員が保釈請求をするわけではないので、注意が必要です。

そこで、同司法統計の第17表をみると、全国の地裁への保釈請求数は22,061件とのことですので、2017年度(平成29年度)の地裁での保釈許可率(保釈が認められた割合)は約52.5%ということになります。

まとめると、勾留された被告人のうち6割弱が保釈を請求し、そのうち半分くらいが許可されているようです。

※もちろん、事件が年度をまたぐこともありますし、一人で複数回保釈請求をすることもありますが、その辺りは誤差の範囲内ということで。

保釈中に守らなければならない条件(保釈条件)

保釈が許可される場合、通常は、併せて釈放後に守るべき条件も付されます。これを指定条件あるいは保釈条件といいます。

一般的には以下のような条件を付されます。

  • 指定の住所に居住すること(変更する場合は事前に裁判所の許可を得ること)
  • 裁判所からの呼出しを受けた場合には必ず出頭すること
  • 逃げ隠れしたり証拠隠滅と疑われる行為をしたりしないこと
  • 海外旅行や3日以上の旅行をする場合は事前に裁判所の許可を得ること
  • 被害者や証人など事件関係者とは、弁護人を通して連絡をする場合を除き、一切の接触をしないこと

事件の内容に応じて、これ以外の条件が付されることも多々あります。

例えば、日産のゴーン氏の事件ではかなり詳細な条件が付されたそうです。もっとも、これは裁判官が考えて指定したのではなく、弁護人からの提案や裁判官との交渉の結果でしょう。
刑事裁判を考える:高野隆@ブログ:保釈条件について(2019年4月6日)

保釈条件に違反した場合、次のとおり、保釈が取り消され保釈金が没取されることがあります。

保釈中に逃亡するとどうなる?(保釈の取消しについて)

なお、保釈により釈放されても、無事に裁判手続に出頭すれば問題ありませんが、中にはそのまま逃亡してしまう被告人もいます。
その場合、被告人はどうなるのでしょうか。

被告人が逃亡するなどした場合、まず、裁判所は保釈を取り消すことができます。

※刑事訴訟法96条1項では、保釈の取消事由として次の場合が定められています。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

保釈が取り消された場合、もとの勾留(身柄拘束)の効果が復活し、被告人は再び身柄拘束されることになります。
(なお、逃亡すること自体は何らかの犯罪に当たるわけではありません。)

また、保釈を取り消す場合、裁判所は保釈金の全部または一部を没取することができます(後述)。
つまり、その場合には保釈金が戻ってこないことがあります。

 

保釈金とは

正しくは保証金(保釈保証金)ですが、一般的には「保釈金」と呼ばれることが多いため以下でも保釈金と表記します。
保釈金とは、身柄を釈放する代わりに、公判への出頭などを確保するために預託させる金銭のことです。
要するに逃げないための担保です。

保釈金額の相場

前述のとおり、保釈金は逃げないための担保ですから、金額はその被告人にとって脅しとなるようなものでなければなりません。

そのため、保釈金の額はその被告人の収入や資産に応じてケースバイケースに決定されることになり、統一的な基準があるわけではありません。

あくまで私の感覚ですが、例えば、住所不定ではなく、定職があり、年収300から500万円程度の方で、犯罪事実を認めている(争っていない)のであれば、200万円前後となるのが一般的かと思います。

なお、収入が低ければ保釈金も少なくはなりますが、150万円を下回る例はほとんど聞いたことがありませんので、このあたりが最低ラインでしょう。
他方、収入や資産が多い人の場合はその額に応じて保釈金額も増え、場合によっては数億円にのぼる場合もあります。

また、起訴されている罪が重い場合や前科がある場合など、重い刑を言い渡される可能性がある場合や、共犯者がいる場合、犯罪事実を争っている(否認している)場合などでは金額が上がる傾向です(前述のとおり、そもそもこのような場合には保釈自体が認められにくくなります)。

保釈金は戻ってくる? いつ戻る?

保釈金は、裁判が終われば全額戻ってくるのが原則です。

上記のとおり、 保釈金とは被告人が逃げないための担保ですから、そのようなことがなく(保釈が取り消されずに)裁判が終われば、保釈金は全額戻ってくるのです。
たとえ裁判の結果が有罪であろうと無罪であろうと、また執行猶予だろうと実刑だろうと同じです

実際に、ほとんどの事例で保釈金は全額戻ってきています。
統計を見ても、全国の地裁において平成29年中に保釈されたのが11,589名(前述)ですが、同司法統計の第16表によれば、保釈を取り消された(すなわち保釈金が戻ってこなかった可能性がある)のが88名ですから、99%以上の事例で保釈金は全額戻ってきていることになります。

通常、判決の言渡しから3日前後で戻ってきます。

保釈金が戻ってこない場合

前述のとおり、被告人が逃亡したりした場合には、保釈が取り消されることがあります。
そして、保釈が取り消された場合、保釈金の全部または一部が没取されることがあります。
(細かいですが、この場合は「没取」というのが正しい表記で、「没収」ではありませんので注意が必要です。)

また、保釈されていた被告人について、実刑判決が確定した後に逃亡した場合(冒頭に紹介した事件のような場合)にも、保釈金は没取されます(刑事訴訟法96条3項)。

 

手続の流れ

釈放までにかかる期間

保釈請求を行ってから実際に被告人が釈放されるまでの期間は、通常は1~3日程度です。
請求当日の夜に釈放される場合もあれば、5日程度かかる場合もあります。

裁判所ごとの運用や、請求の時期(連休前かどうか)・タイミング(裁判の進行状況)などにより、ケースバイケースです。

手続の詳細

起訴された後に、裁判所に保釈請求書を提出します。
保釈請求書のほかに、通常は、被告人本人の誓約書や家族や雇い主などの身元引受書を添付します。その他に証拠書類があれば、併せて提出します。

その後、裁判官は検察官の意見を聴いた上で保釈を認めるかどうかを判断し、最終的に保釈許可あるいは不許可の決定を出します。

手続の流れとしては、裁判所に保釈請求書を提出→そのコピーを裁判所から検察庁に送付(FAX)→検察官が保釈についての意見書を裁判所に提出→(場合によっては弁護人と裁判官が面談→)裁判官が保釈を許可するかどうかを判断する、という順序になります。
この一連の手続が、状況によっては当日で済んだり3日かかったりするわけです。

保釈を認める決定が出た場合には、保釈金を裁判所に納め(現金または銀行振込み)、その後2~3時間ほどで釈放される例が多いです。

異議申立て(抗告・準抗告)

保釈の許可・不許可の決定が出た場合、検察官・弁護人は異議申立てをすることができます。刑事訴訟法上の「抗告」あるいは「準抗告」という手続です。

この場合、本体の刑事裁判(有罪か無罪か、あるいは量刑をどうするか)とは別に、保釈を許可するかどうかの点だけで争われます。
時にはこの点で最高裁まで争われることもあります。

 

保釈の現実

保釈というと、単に「お金を払って釈放させる」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
確かに、形式的な請求書とともに、定型の誓約書と身柄引受書を作って出せばほぼ確実に保釈が認められるような事例も多くあります。

しかし、現実には、検察官の強い反対によりいくら高額の保釈金を用意しても保釈が許可されない場合もあります。
特に、否認事件(無罪を主張する事件)においてはこの傾向が強く、弁護人としては非常に苦労します。
留置場や拘置所にいる被告人にとってみれば、証拠となる資料を探したり見たりすることも十分にできませんし、弁護人としても、電話で済むような簡単な話でも拘置所などに行って面会手続を行わなければなりません。

保釈が認められなさそうな事例では、弁護人は頭を悩ませながら請求書を書きますし、場合によっては徹底的に争うこともあります。

このように、一口に保釈といってもさまざまな背景がありますので、皆さんが報道などで「保釈された」「保釈が不許可となった」といった事例を見る際に、本記事がその裏側を想像するための一助になればと思います。


-法務一般

Copyright© 関口法律事務所 , 2019 All Rights Reserved.