不動産の管理 不動産取引

境界にあるブロック塀は誰の所有? 修理や撤去するには? 費用は誰の負担?


隣地との境界にあるブロック塀につき「どちらが所有者なのか分からない」ということがあります。

所有者が分からないと、塀の修理や撤去(解体)、建替えなどができず、また費用をどちらが負担するのかという問題が生じてしまいます。

そこで今回は、所有者はどのように決まるのかについてや、修理や撤去を行うにはどうすればよいか、費用の負担はどうなるのか、について解説します。

また、参考までに、塀が倒れてしまった場合の責任や、「買った際に、塀がうちの所有だとは聞いていなかった」といった場合の責任についても触れます。

所有権はどちらにあるか

数十年前に塀が作られたものの、双方の土地の所有者が変わることで、現在はどちらが所有者だか分からなくなってしまっている、ということはよくあります。

仲介業者を通した売買であれば、土地を買う際に「塀の所有権がどちら側にあるか」を確認するのが通常ですが、個人同士で直接売買をしていたり、贈与や相続で所有権が変わったりした場合には、塀についての確認を行っていないことがあります。

このような場合、所有権を確定させるためには塀が作られたころまでさかのぼって調査をする必要があります。

最初に作った側が所有者

調査の結果どちら側が作ったのかが分かれば、原則として作った側が所有者と考えてよいでしょう。
最初に家を建てた側が塀を作っているケースが多く見られますね。

もちろん、最初に双方がお金を出し合って作り、共有となっている場合もあります。

そして、塀ができた後に土地を買った人は、原則として塀の所有権も引き継ぎます。
そのため、塀を作った側の土地を所有している方が、塀の現在の所有者ということになります(塀を作った際に共有となっていれば、現在も共有ということになります)。

誰が作ったか不明の場合

仮に、どちら側が塀を作ったのかが分からなくとも、塀がどちらかの土地内に完全に収まっているのであれば、原則として塀がある土地側が塀の所有者と考えられます。
(先ほどから「原則として」と強調していますが、ほとんどの場合はそのとおりに考えて問題ないでしょう。弁護士に持ち込まれるような案件では「例外」がよくありますが…)

一方、塀が土地の境界線上にある場合は、民法229条により原則として共有とされます

民法第229条(境界標等の共有の推定)
境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

一般に住宅の敷地を囲むような塀は、ここでいう「囲障」にあたります。

※なお、条文中の「推定する」とは、反対の証拠がない限りそう扱う(ここでは共有とする)という意味です。

このように、誰が作ったか不明であっても、土地の境界を頼りに所有者を判断することができます。
もちろん、境界線が明らかになっていることが前提ですが
(弁護士に持ち込まれるような案件では、この部分からあいまいなことがよくあるのです…)

 

修理・撤去をするには

修理や撤去の方法は、所有者がどちらにあるか、あるいは共有なのかによって以下のようになります。

自分が所有の場合

後述のとおり費用は自分の負担になりますが、当然、自由に修理や撤去をすることができます。

コンクリートブロックをやめてアルミフェンスにするなど、造り替えることも自由です。

ただし、不相当に高い塀を作ってはいけません。
隣地側の眺望や日照を害したり、圧迫感を与えたりするなどの理由から、場合によっては差止請求などをされる可能性があります。

おおよそ2mを超えるような壁を作りたい場合には、念のため隣地側と協議をした方がよいでしょう。

隣地側が所有の場合

壁が劣化していて危険な場合などに問題となります。

上記のとおり隣地側は所有者として自由に修理・撤去できるわけですが、逆に、危険な状態が放置されてしまうこともあり得ます

相手の所有物なので何も言えないのが原則ですが、倒壊しそうな場合などこちらに被害が生じる危険がある場合には、最終的には訴訟により修理などの請求をすることになります(所有権に基づく妨害排除請求・妨害要望請求)。
緊急性が高ければ、仮処分の申立てを行うことも可能です。

共有の場合

共有の場合は少しややこしくなります。

特に緊急でないような場合でも、修理をするには隣地側の同意が必要になります(民法252条本文。過半数の合意が必要なので)。

ただし、倒壊しかけているような状態を修理するのであれば、こちらが単独で行うことができます(保存行為といいます。民法252条ただし書き)。

なお、塀を造り替えるなど、形を完全に変えてしまうような場合には隣地側の同意が必要です(民法251条)。

民法第251条(共有物の変更)
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

民法第252条(共有物の管理)
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

修理・撤去の費用負担

単独で所有している場合

費用は所有者が負担します。

前述のとおり、隣地側が所有の場合で、修理などを行わない場合には訴訟や仮処分により修理を強制することはできます。
この場合、最終的には強制執行としてこちらで修理をして相手からその費用を回収することになります(代替執行といいます)。

共有の場合

共有の場合には、隣地側と話し合って費用を出すか、自分が修理を行いその半分を相手に請求することになります(民法253条1項)。

民法第253条(共有物に関する負担)
1 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
(以下略)

倒れてしまった場合の責任

さて、塀が劣化したため倒壊してしまい、建物や人(住民や通行人など)に被害を及ぼしてしまった場合は、その損害は誰が賠償するのでしょうか。

土地上の、建物や塀などの工作物を占有・所有する人には、その工作物を適切に管理する責任があります。
管理を怠った結果、その工作物が通常備えるべき安全性を欠く状態になり、その結果他人に被害を発生させた場合には、占有者・所有者は損害賠償責任を負います(民法717条。土地工作物責任)。

塀であれば、占有者(家を借りている人など)か所有者が損害賠償責任を負うことになります。
危険な状態になる前に修理や撤去などの措置をとる必要があります。

詳細はこちらの記事を参照(ブロック塀の危険性や、倒壊した場合の法的責任について)。

共有の場合は、こちら側・隣地側の双方で連帯責任を負います。詳細はこちらの記事(建物やブロック塀などが共有物であった場合の、賠償責任(土地工作物責任)の負担や、対応策について)を参照。

古い塀は注意が必要です。
特にブロック塀や、大谷石でできた塀などは構造上問題があることが多いので早急に対処しましょう。

 

塀のことを聞いていなかった場合

以上のように、塀の所有者には、修理や撤去の費用を負担する義務や、塀が倒壊した際に損害賠償を行う義務があります。

そして、その義務は、知らなかったとしても免れません
仮に、今の土地を買う際に「塀は隣の所有だ」などと聞いていた場合であっても、実際にはこちらの所有であったとすれば、所有者としての責任を免れることはできないのです。

ではその場合には、誰かに責任を問うことはできないのでしょうか。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)

まずは売主に対する責任追及が考えられます。

この記事では詳細は割愛しますが、例えば、劣化していたり構造上の問題があったりして倒壊の危険があるような壁があり、しかも売主(前所有者)がそのことを伝えずに売買契約に至った、というような場合は、売主に対して損害賠償請求をすることができます。

仲介業者の説明義務違反

また、上記のような場合、その売買契約を担当した仲介業者に対しても、調査・説明義務違反を理由として損害賠償請求をできる場合があります。

仲介業者としては、事前に(可能な限り)塀の所有権など土地の権利にかかわる事情を調査して、かつ当事者に説明する責任があります。
これをおこたった場合、調査・説明義務違反として損害賠償請求を受けることがありますので注意しましょう。


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