【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第2回(総論② 文章の書き方)
「契約書の作り方」第2回は総論②として、「文章の書き方」について。
第1回で述べたように、このシリーズでは、ひな形をベースに作成することを前提にしています。
そのため、今回はあまり実践的ではないかもしれません。
しかし、条文を追加する場合や、今後もし契約書を一から作ることがあればその場合に役立つことですので、ご参照ください。
第1回はこちら:【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第1回(総論① 体裁)
法律知識よりも日本語力が大事
契約書を作るには、まず法律を学ばなければ、とお思いの人も多いでしょう。
確かに、ある程度の法律知識は必要になってきます。
しかし、法律知識よりも大事なのは「正確な日本語で書くこと」です。
そもそも契約書とは、お互いの約束事を文書として残すために作るもの。
この作業を分解すると、
- 約束事の内容をきちんと決める
- それを正確に文章に落とし込む
という2つに分けられます。
もちろん、これらを前提として「その内容が法的に問題ないかをチェックする」という作業も必要になりますが、これは上記1・2の後の話です。
いかに法的知識を仕入れたとしても、約束内容を正確に契約書に表現できなければ意味がありません。
そこで、まずは上記の2点について解説します。
説明の便宜上、上記1については次回に回し、今回は、上記2についてポイントを説明します。
初心者が特に気を付けるべき点は以下のとおりです。
- 主語と述語を対応
- 一文は短く
- 箇条書きを活用する
- 4W1Hを意識
- 表現のかっこよさにこだわらない
主語と述語を対応
文章として基本ですが、おろそかになりがちなので注意。
「甲は~」で始まり、「~とする」で終わることがあったりしますので気を付けましょう。
一文が長くなると主語と述語の対応がおかしくなったり、いつの間にか述語がなくなってしまったりするので、次項で説明するとおり、まずは一文を短くしてみるのがお勧めです。
一文は短く
契約書や法律の条文を見ると、やたら長い文章で書いてあることがよくあります。
確かに、複雑な事柄を文字だけで説明しようとすると、どうしても長くなってしまいがちです。
しかし、初心者は真似してはいけません。
文が長いと、「どのような場合にどのような権利・義務が発生するのか」が分かりにくくなるばかりか、主語と述語が対応しなくなるというミスが起きやすくなりますので、なるべく短くしましょう。
短文で構成するとブツ切りの単調な文章になってしまいますが、見た目のかっこよさよりも、正確さ・分かりやすさを重視すべきです。
箇条書きを活用する
前項と同じ趣旨ですが、文を短く、分かりやすく記述するためには箇条書きを活用するとよいでしょう。
特に、権利や義務の発生する条件が複数あるような場合には、積極的に箇条書きを使うべきです。
例えば、「甲は、○○の場合、△△の場合または□□の場合には、●●のない限り、■■する。」のような文であれば、次のように整理します。
甲は、次の各号の場合には、■■する。ただし、●●の場合はこの限りではない。
① ○○のとき
② △△のとき
③ □□のとき
4W1Hを意識
実際に記載するかどうかは別ですが、条文を作る際には必ず4W1Hを意識してください。
5W1Hの6つから、whyを抜いた5つです。
誰が・いつまでに・何を・どこで・どういう方法で行う義務があるのか。これらの点は(少なくとも頭の中では)明確にしておきましょう。
特にhow(どういう方法で)は記載を忘れずに。
例えば、
「○日までに●円を支払う」→「○日までに、甲の指定する銀行口座に振り込む方法により●円を支払う」
「甲の同意がない限り」→「甲の書面による同意がない限り」
「別途定める○○により」→「別途、甲乙の協議により定める/甲が指定する○○により」
などです。
表現のかっこよさにこだわらない
契約書というと、文語的?な堅苦しい表現にするものだと思う人もいるかもしれませんが、そんなことより「分かりやすさ」を重視しましょう。
物々しい表現で長ったらしく書く必要は、全くありません。
一文が短く、箇条書きが多くても良いのです。安っぽく見えたとしても、分かりにくいよりは良いです。
なお、この点に関連し、「~するものとする」という表現について補足。
何か法律文書っぽい感じがするために好む人が多いのでしょうが、くどい上にニュアンスが伝わりづらいのでやめましょう(法的に間違いというわけではありませんが)。
初心者はひとまず「~する」で統一しておくのが無難です。
詳しくいうと、義務を表す書き方には大きく、
- ~するものとする
- ~する
- ~しなければならない
の3通りあり、確かに、法的な意味はどれも同じです。
ただし、2が基本形で、1はニュアンスを弱める場合、3は強める場合に使う、と使い分けています。
慣れないうちは、単純かつ基本形の2で統一することをお勧めします。