あなたの契約書は大丈夫?② 構造・体裁について

前回の記事(あなたの契約書は大丈夫?① 割印・消印・契印の押し方について)では主に割印・消印・契印の違いや押し方などが中心でした。

今回は、契約書全体の構造や、条文の構造・体裁など(相変わらず細かい点ばかりですが…)についてご説明します。

全体の構造

まず、契約書の外観はのようになります。

このように一般的な契約書は、①タイトル、②前文、③内容、④後書き(後文)、⑤日付、⑥当事者の署名(または記名)押印、の6つの要素から成ります。

全部の要素が常に必要となるわけではありませんが、少なくとも③内容⑤日付⑥当事者の署名(または記名)押印だけは省略しないようにしてください。

それでは、順に詳しくみていきましょう。

①タイトル

この契約を一言で表す名前を記載します。

専門家であれば、法令用語や業界用語をうまいこと考えて名前を付けることができますが、難しそうなら別に無理して付けなくてもかまいません。

単に「契約書」「覚書」「念書」でもかまいませんし、そもそもタイトルが書いてなくても法的には全く問題ありません
それよりも、無理して考えて変な名前を付けてしまったり、それこそ名前が内容とずれてしまってる方が問題です(たまに見ます)ので、無理は禁物です。

②前文

通常は、この契約書において誰と誰がどんな契約を締結したか、を簡潔に記載します。

例えばこんな感じです。

 株式会社○○不動産(以下,「甲」という。)と○○ジャパン株式会社(以下,「乙」という。)は,本日,以下に定めるとおり業務委託契約 (以下 「本契約」 という。) を締結する。

ここに契約の目的や背景などを記載することもあります。

が、どの範囲で盛り込むかを考えるといろいろと表現に悩むこともあります。
そういう場合は上記のような最低限の表現にしてしまい、別途目的や背景などは第1条に入れてしまうのも一つの手です(特に目的・背景についてある程度長く書きたい場合)。

前文は別になくてもよいので、表現にそこまでこだわる必要はありません。

③内容

当然ですが、ここが一番重要です!

が、ここを書き出すと長くなってしまうので別の機会に。
今回は条文の体裁(後述)について解説するにとどめます。

④後書き(後文)

一般的にはこのような内容を記載します。

 以上の契約の成立を証するため本契約書を2通作成し,各自記名押印の上,甲乙各1通ずつこれを保有するものとする。

別になくてもよいので内容にこだわる必要はありませんが、ひな型を使いまわす場合には注意してください。

何らかの都合で契約書を全員分作らなかったり、印紙税の節約のために一方にはコピーしか渡さなかったりした場合には記載を変更してください。

⑤日付

必ず記載してください

実は日付の記載がなくても法的な効果には変わりはないのですが、契約がいつ成立したのかが後に争われたり、契約を巻き直した(内容を追加・変更して新たに契約し直した)りした場合には、この契約書がいつ作成されたかが重要な意味を持つことがあります。

そのため、正確な日付(署名押印した日付)を記載しましょう。
細かい話ですが、郵送でやり取りする場合には、後に署名押印した方の日付を記載するのが一般的です。

なお、不用意に日付をさかのぼらせたりするのは、例外的な事情がない限りやめましょう(さかのぼらせ過ぎた結果、その日付時点での代表者が今と違う人だったという笑えない事例もあります)。

⑥当事者の署名(または記名)押印

これがないと契約書を作った意味がありません。

方法は前回も説明しましたが、ここでおさらい。

個人であれば住所・氏名
個人事業主であれば住所・屋号・氏名
法人であれば住所・法人名・代表者の肩書と氏名

をそれぞれ記載します。
(氏名の部分をスタンプやプリンタで印字する場合を記名、自筆で書く場合を署名といいます)

そのうえで、個人なら認め印(三文判など)または実印、法人なら角印か代表印(実印)を使います。
印鑑の種類について、詳しくはこちらの記事(ハンコの法的効力)をご参照ください。

 

文章の体裁

次は、契約書中の文章の体裁についてです。

といっても、特に決まりがあるわけではありませんので一般的な方式をご案内します。

・フォント・文字サイズ・余白など

細かい点ですが、完全に個人的な好みです。

フォントは明朝体でもゴシック体でもかまいません(弁護士が作る契約書は明朝体のものが多いような気がします)。

文字サイズは10.5ポイントか12ポイントのものが多いと思います。

余白については、少なくとも左側は25mm以上空いていると、2穴パンチで穴を空ける際に便利です。
このくらい空いていれば、裁判でコピーを証拠として出す際にも、弁護士・裁判所としては助かります

全角・半角や、その他細かい点についても気にする必要はありません。
なお、弁護士によっては、裁判文書を作るときのクセで、読点「、」がカンマ「,」になっていたり、英数字や記号が全て全角になっていたり、文字の大きさが12ポイントになっていたりします。
(つまり、文字の使い方がそうなっている契約書は弁護士が作成(関与)した可能性が高い、ともいえます)

・条文の体裁

ますます細かくなっていきますが、もちろん個人的な好みです。

一般的には、一つの条文が、タイトル・条・項・号で構成されます。
条・項・号の表記はそれぞれ、条は「第1条、第2条、…」、項は「1、2、…」、号は「①、②、…」とするのが一般的です。

例えば法律の記載方法に従うと、以下のように条文のタイトルを先に書き、その後に条・項・号を書くことになります。
左側だけみると、このような感じです(なお、法律の記載方法では、第1項には項番号を付しません)。

(契約の解除)
第17条 甲および乙は,・・・
 本契約を解除することが・・・
 ① 第7条の規定に違反・・・
 ②
 ・
 ・
2 前項の規定により本契・・・
3 第1項の規定は,相手・・・

何となく第1項に項番号を付さないのが気持ち悪い、という方は、

第17条(契約の解除)
 1 甲および乙は,それぞ・・・
  本契約を解除することが・・・
  ① 第7条の規定に違反・・・
  ②
  ・
  ・
 2 前項の規定により本契・・・
 3 第1項の規定は,相手・・・

という記載方法でもかまいません。

どのような記載方法でもかまいませんが、特にこだわりがなければ一般的に流通している書き方に従っておくのが無難です。

また、修正していくうちに条番号がずれたり重複したりしないようにしましょう。
特に条文数が多い契約書を編集する場合には、ワードのアウトライン機能を使うと便利です。

 

今回も細かい点ばかりでしたが、次回はようやく中身について解説します。