あなたの契約書は大丈夫?③ 条文の記載内容、書き方について

今回から、契約書の内容についてみていきます。

といっても、まずは条文の書き方や体裁についてです。
条文には何を書く必要があるのか、またその書き方についてです。

どのような条文を契約に入れるべきかについては次回。

書き方の基本的な注意点

そもそも「契約書」という書面には何を記載すべきなのでしょうか。

契約をするということは、合意によって何らかの権利または義務を、発生(または移転・消滅)させるということです。
そして、この合意があったことを証明するために作るのが契約書ですね。

したがって、契約書を構成する条文には(基本的には)どのような権利・義務を発生(または移転・消滅)させたのかを書くことになります。

 

基本となる書き方

契約上の権利・義務は合意によって発生・移転・消滅させることができますので、例えば「甲は○○する義務を負う」と記載すれば、甲にその義務が発生し、乙にはそれに対応する権利が発生することになります。

これが基本形です。

消滅・移転の場合も同じです。
「乙が本件業務を遂行する過程で○○について発生した権利は、全て甲に帰属する」や「○○の場合は、甲は乙に対して●●を請求することができない」などの書き方があります。

なお、例えば「甲は乙に対し○○を引き渡す義務を負い、これと引換えに、乙は甲に対し●●円を支払う義務を負う」という合意の内容を、省略して「甲は乙に○○を●●円で売却する」と記載してもかまいません。

売買、賃貸、委託など言葉の内容からそれぞれの権利・義務が明らかな場合に限っては、このような省略形を使うこともできます。
その言葉だけでは一義的に意味が確定しないような場合(コンサルティングとかマーケティングとか)には、その単語だけでは内容が不明確ですので、別途、内容を定義する必要があります。

 

条件・期限を付けることもできる

権利義務の発生・移転・消滅には条件や期限を付けることも可能です。

「○○の場合には、甲は乙に対し●●を請求することができる」「乙は、平成●年●月●日にまでに○○しなければならない」「○○の権利は、平成●年●月●日の経過をもって消滅する」などのように記載します。

特に条件は、「どういう場合に権利が発生するか」を決めるものであるため、非常に重要です。

 

権利・義務に関しない条項(目的条項、注意規定など)

なお、権利義務の発生・移転・消滅に関しない事項を条文に入れることもできます。

例えば、契約が締結された背景を説明するための条項として「本契約は、甲及び乙の間で○○事業を行い、双方の発展繁栄のために業務提携を実施することに鑑み、両当事者間における合意事項を定めることを目的とする」などと記載されることがあります(目的条項などと呼ばれます)。

この条項自体から何らかの権利義務が発生するわけではありませんが、このような目的規定は、他の条項の解釈指針となりますので、そのために入れておくことがあります。

また、契約や法律により明らかな点であっても、念のため確認的な規定を入れておくこともあります。
例えば、「○○の場合には、甲は本契約を解除することができる」としたあとに「この場合においても、甲は損害賠償を請求することができる」とする場合です。

法律上は解除をしても損害賠償請求はできますので、本来は後半の規定はなくともよいのですが、それを分かりやすくするために記載しています(注意規定などと呼ばれます)。
このような配慮が無用なトラブルを避けることにもなります。

その他、契約に至った背景や、契約の遂行にあたって尊重すべき事項などを定める例もあります。

 

条文の構成(条・項・号)

これらの内容を実際にどのような形式で書くのか、つまりどのように条文に落とし込むのかも重要です。

契約書はいくつかの条文から成りますが、それらの条文は通常「条」「項」「号」という単位で構成されます。
(さらに大きな単位で「編」「章」「節」などがありますが、ここではいったん置いておきます)
また条・項・号のそれぞれが、「本文・ただし書き」「前段・後段」に分かれることもあります。

契約書はいくつかの条文の集まりですが、1の条文は、1つの項だけで構成される場合もあれば、複数の項で構成される場合もあります。
そして、基本的には1つの項には1つの事柄が書かれます。
したがって、条文の基本的な単位は「項」であるといえます。

そこで、この「項」の記述方法についてみていきます。

基本は1文で!

1つの項はなるべく1つの文だけで構成するようにしましょう。
必ず1文でというわけではないのですが、初心者の方はよほどのことがない限り1文で記述するよう意識してください。

多少長くなってしまうことがあるのは仕方ないとしても、1つの項に複数の文を入れると複雑になり、書いてる人にも読む人も分かりにくくなってしまいます。

1文は、基本的に「発生する権利義務の内容」と「その条件や期限(あれば)」で構成します。
(権利義務の発生のほか移転・消滅の場合でも同じです)

例えばこんな感じです(解約権を発生させる例)。

甲及び乙は,本契約期間中であっても,いつでも本契約を解約することができる。

解約の方式に制限を付ける場合には、

甲及び乙は,本契約期間中であっても,1か月前までに相手方に書面により通知することにより,いつでも,本契約を解約することができる。

とすることもできますが、これでは長くて読みにくいので、

1 甲及び乙は,本契約期間中であっても,相手方に通知することにより,いつでも本契約を解約することができる。
2 前項の通知は,解約の1か月前までに,書面によって行わなければならない。

と2つの項に分けて記載する方が分かりやすくなります。

なお、次のように2つの文を1つの項に入れてしまう方法もあり、これが絶対ダメというわけではありません。

甲及び乙は,本契約期間中であっても,相手方に通知することにより,いつでも本契約を解約することができる。この場合,解約の1か月前までに,書面によって通知しなければならない。

(この場合、最初の文を「前段」、後の文を「後段」といい、例えば「第3条第2項後段」などといいます)

確かにこのくらいの長さであれば問題ありませんが、条件を加えていくと複雑になってしまいがちですので、特に初心者の方は「1項は1文で」を心がけるようにしてください。

 

ただし書き(但書)について

基本的に1項は1文で構成しますが、ただし書き(但書)を入れる場合には2文で構成することもできます。

ただし書きとは、例外を定める場合に使います。
ある文で原則を定めつつ、「ただし」の後でその例外を定めます。

第●条の引渡しは,乙が甲の事務所に目的物を持参する方法によって行う。ただし,他の方法を甲が事前に指定した場合は,この限りでない。

(このうち最初の文を「本文」、後の文を「ただし書き」といい、例えば「第3条第2項ただし書き」などといいます)

このように、「ただし書き」を使うのは、本文で原則を定めつつ、ただし書きで例外を定めるという場合です。

よくある例ですが、例えば、

乙は,前条の代金を,毎月末日限り,甲の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし,振込手数料は乙の負担とする。

という使い方は正しくありません。
ただし書きが例外を表していませんからね。この場合は「ただし,」が不要です。

 

条件が複数ある場合は「号」を使う

権利が発生する条件が複数ある場合は、

甲は,○○の場合,●●の場合または△△の場合には,本契約を解除することができる。

などとはぜずに、を使って次のように整理します。

甲は,次の各号に定める場合には,本契約を解除することができる。
 ① ○○の場合
 ② ●●の場合
 ③ △△の場合

通常、号にはこのようにフレーズ(句)で記載し、文では書きません(文を入れる必要があるのであれば、項に書きます)。

 

その他の注意点

形式面は以上のとおりですが、やはり、なかなかこれを文章に落とそうとすると難しい、ということもあるかもしれません。

そこで、文章の構成について簡単にアドバイスします。

まず、前述しましたが、基本は1文でという点に気を付けてください。

そのうえで、1文はなるべく短くするように、かつ主語と述語を離さないよう心掛けると、読みやすい文章になります(契約書に限りませんが)。
どうしても短くならないようであれば、号を使って箇条書きにしてみてください。

これを徹底しようとすると、何だか単調な文章になってしまうかもしれません。
しかし、契約書は、小説や詩のように「美しい」文章を目的としたものではありません。
あくまで権利・義務の内容を「明確に」定めることが目的ですので、慣れないうちはこの目的を優先してください。