法務一般

GPS捜査の何が問題なのか その1

投稿日:2017年3月14日


明日3月15日に言い渡される最高裁判決を前に、ここ数日、新聞などで「GPS捜査」という単語を目にすることが多いかと思います。

元となった事件は、被告人が関西の広い範囲で組織的に窃盗などを繰り返していたという事件です。
この事件の被告人(主犯)は窃盗などの事実関係は認めていましたが、捜査の過程で、警察が関係者の自動車・バイクにひそかにGPS端末を取り付けて行動を追跡していたことが問題とされました。

2015年7月の一審判決(大阪地裁)では有罪判決が下され弁護人から控訴をしたものの、2016年3月の二審判決(大阪高裁)でも結論は維持されました。
その後弁護人が上告し、舞台が最高裁に移ったわけです。
さらに昨年(2016年)10月に、最高裁の大法廷が審理することが決まってより話題となりました。最高裁では通常は小法廷が担当しますが、大法廷が担当するのは憲法判断や判例変更を行う場合や、重要な論点が含まれる場合に限られるからです。

全国のいくつかの刑事裁判でGPS捜査の違法性について争われており、裁判所によって判断が分かれていました。
高裁レベルでも判断が分かれ、(当該事案では)GPS捜査を違法と判断する高裁判決もあったことから、最高裁の判断が待たれていたところです。
(また、警察庁の通達でGPS捜査を行ったことを公にしないよう定められていたのが発覚し、この点も問題になりましたね。)

そこで現在最高裁の判断が話題になっているわけですが、そもそもGPS捜査の何が問題なのでしょうか。
被告人が犯行を認めているのに捜査の違法性を問題とする意味は何なのでしょうか(→これは次回に)。

何が問題となっているのか

新聞等では概ね「GPS捜査が任意捜査なのか、令状が必要となる強制捜査なのか」「強制捜査だとしたらどのような令状が必要になるのか」という観点で問題を整理していることが多いように思います。
ただし、最終的に裁判で議論となるのは「その捜査が違法であったか」そして「違法な捜査によって得られた証拠は裁判で使用できないのかどうか」という点です。その前段階で「ある行為が強制捜査なのかどうか」が問題となります。
そこで、ここでは前者の「強制捜査かどうか」の問題に絞って考えてみます(後者の令状の選択の問題は、たぶん検証許可状になると思います)。

強制捜査とは

マスコミ用語では強制捜査ですが、法律用語では「強制処分」といいますので、以下これにならいます。

強制処分とは、ざっくりいうと、個人の身体や財産、プライバシーなどの権利を制約するような捜査手段のことをいいます。
典型的には強制的に身柄を拘束する逮捕・勾留や、自宅などの捜索、証拠品の押収などです。電話の傍受も強制処分の一種です。

なぜ、ある行為が強制処分にあたるかどうかが問題になるのかというと、強制処分を行うためには原則として令状(=裁判所の許可)が必要になるためです。
令状が無いのに強制処分にあたる行為をすることは違法になります。

これに対し、任意に警察署に同行させ事情聴取をすることや、職務質問を行うことなどは強制処分にあたらず任意処分です。
任意処分にあたる行為であれば令状が無くともできます。

ある行為が強制処分にあたるかどうかは、一般に強制の度合いや権利侵害の度合い、その手段を取らざるを得ない必要性などを総合的に考慮して判断されます。
今回は主にプライバシー権が問題となっているのでこの点について見てみます。

人が路上を歩いたり車で移動しているのを追跡(尾行)することは、その人の行動内容という私的な情報を集めることですから、プライバシーの侵害といえそうです。
しかし、公道上であれば誰もが見ることができるので、プライバシー侵害の度合いは低いといえますから強制処分にはあたらないと考えられています。

では、自動車にGPS端末を付けて自動車の行き先を調査することはどうでしょうか。
自動車は公道を走っているので同じく考えられそうです。また、判明するのはあくまで車の位置だけであり、人の行動までもが分かるわけではありません。これらの点から、プライバシー侵害の度合いは低いとも考えられます。特に、途中まで尾行していて見失ってしまった場合にGPSに頼る、という程度の使い方であればそういえるかもしれません。
しかし、いくら公道を走っているとはいえ、長期間にわたって24時間の行動の記録を取り続けたり、今回の事件のように交際相手などの関係者の行動までも同様に調査するのはどうでしょうか(今回の事件では交際相手の自動車にGPS端末た付けられたのは数日間のみだったようですが)。

犯人逮捕のためにはやむを得ないだろ、と思うかもしれません。
確かに、凶悪犯罪が起きた場合で、証拠関係から間違いなくその犯人だと思われる被疑者が、まさに今夜遠くに逃亡しようとしているようなケースではその必要はあるでしょう。
しかし、特に根拠もなくあなたが事件の関係者だと疑われて、その行動を24時間監視されるとしたらどうでしょうか。今回の事件でも、車にGPS端末を付けられた交際相手は、事件への関与は認められませんでした。

このGPS捜査が強制処分ではなく任意処分とされた場合は、原則として捜査機関が自由に行うことができることになってしまいます。
今回の問題は「GPS捜査という手法が認められるべきかどうか」ではなく、「これを捜査機関の判断のみに任せて行って良いのかどうか」という問題だと考えてよいと思います。

違法となった場合はどうなるの?

GPS捜査が強制処分にあたるかどうかが問題となっていることは分かりました。
そして、強制処分にあたる場合には、令状なくして行われた捜査は違法になります。

ですが、話はここで終わりません。

では、捜査が違法となった場合には裁判にどう影響するのでしょうか。
また裁判においてその違法性を主張する意味とは何でしょうか。

続きは次回に。


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