不動産の管理

悪質な家賃滞納者への対処法

投稿日:2017年3月13日


賃貸物件のオーナーにとって、家賃を滞納する借主には困ったものですね。
放置していれば、本来入るべき家賃も入らないばかりか、ちゃんと家賃を払ってくれる優良な借主に貸すことができないという機会損失にもなります。

賃料の不払いは契約に定められた債務の不履行ですから、本来であれば債務不履行として契約を解除でき、その結果土地・建物の明渡しを請求できます。
しかし後に述べるとおり、現実にはそう簡単な話ではありません。

では、オーナー側としてはどのような対策をとるのが良いのでしょうか。

実力行使は違法

実際に、賃料を滞納する借主に対してオーナーはどのような対抗手段をとることができるのでしょうか。

ありがちなのは「これ以上不払いを続けると部屋を利用させない」として実力行使に出る手段です。
借主のいない間に強制的に鍵を取り替えて入れなくさせたり、中の荷物を移転または処分してしまったりするものです。

しかしオーナーや管理会社、保証会社などが現実にこのようなことを行ってしまうと、後で借主から訴えられた場合まず間違いなく不法行為とされ、逆にこちらが損害賠償を支払わなければならなくなります。
賃貸借契約などで「●か月以上賃料不払いとなった場合には立入りや撤去などを承諾する」と書いてあっても、その効力はほぼ認められません。

このように法的手続によらず実力行使を行うことを法律用語では「自力救済」といいますが、法律の世界では自力救済はまず認めらません。
いくら法的には明渡しを求める権利があったとしても、法的手続によらずにそれを私的に実行することは違法な行為なのです。

法的手続の実際とは?

では、きちんと法に則って手続を進めるとなると、どのような流れになるのでしょうか。

最初に説明したとおり、賃料を支払わないのは法的には債務不履行になりますので、賃貸借契約を解除して明渡しを求めることができるはずです。

ただし、現在の判例では1回(1か月)の賃料を支払わなかったというだけでは解除をすることが認められていません。
ある程度(だいたい3か月程度)継続的な不払いが無ければ解除ができないのです。

そのため、一般的には「3か月程度不払いがあって、支払いを催告したにもかかわらず賃料が支払われなかった」という事情があって初めて解除をすることができ、それをもって訴訟を起こして(ここの期間はやり方によって短縮することが可能です)、初めて明渡しの判決を得ることができるのです。

さらに、判決後に強制執行を申し立てて、ようやく現実に土地・建物が明け渡されるのです。

最も早くても、最初の滞納から訴訟を起こすまで2か月くらい(ここは早めることが可能ですが)、訴訟から判決までは2か月くらい(相手方が訴訟に欠席したり、何も争わなかった場合です)、判決から強制執行の申立てをして実際に明け渡されるまで2か月くらい、つまり合計6か月くらいは最低かかることになります。

また、強制執行の費用については建物の大きさなどにより20万円~80万円程度かかり、これとは別に弁護士費用が数十万円かかります。
(強制執行の費用については相手方に支払わせることができますが、このような借主の場合は支払い能力が無いことがほとんどです)

以上が、法的手続を行う場合の時間的・経済的コストです。
強制的に退去させるには、この方法によるしかないのが現状です。

その他の手段は?

現在では、家賃の滞納に備えて家賃保証会社と保証契約を締結している場合も多いと思います。

いざという時は保証会社が家賃分を立て替えてくれますし、必要な保証料は実際は借主に払わせてることが多いので(本来は借主が払うべきものではないと思いますので今後どう変わっていくかは分かりませんが…)、オーナー側としては保証会社を利用することである程度リスクは軽減できます。

しかし、通常は保証される賃料に上限がありますし(契約期間中、または2年間分~4年間分まで、など)、そもそも保証されるのは金銭のみです。
家賃を支払わない借主を追い出して新しい借主を募集するためには、いずれにしても法的手続によって明渡しをさせなければなりません。

連帯保証人についても同様のことがいえます。
不払い分は連帯保証人に請求できるのですが、これについても上限が無いわけではありません。不払い分が数年間分もたまってしまったような場合は、それを連帯保証人に請求しても判決で一部をカットされる例もあります。
また、本人を追い出すためにはいずれにせよ法的手続によって明渡しをさせなければならないのは、保証会社の場合と同じです。

まとめ

以上のとおり、現行の法律・判例はオーナー側にとって厳しい規制となっています。
これは、かつてオーナー側がその権利を濫用して借主が苦しい立場に追いやられてきた歴史があったためです。オーナー側のやり方によっては借主の生活は簡単に破壊されてしまうことがあったため、借主の保護が重視されてきたのです。

しかし、オーナー側にも当然生活があるわけですので、権利の上にあぐらをかいた悪質な滞納者を放置するわけにはいきません。
ただし、現状ではオーナー側の強制手段としては前述の法的手続しか認められていないため、可能な限り損失を少なくすべく、早く動くことが重要です。交渉は続けながらも、今後に備えて2回目の滞納後には法的手続の準備を完了しておく必要があるでしょう(私はそうしています)。

かつて、何だかんだで3年以上の滞納を放置してしまったケースを扱ったことがあります。繰り返される滞納者の言い訳を信じて法的手段に踏み切るタイミングを逸してしまったのです。
オーナー側もその甘さを悔やんでおられましたが、長いことこの状態が続くと、相手方としては「タダで住めている」という状態を既得権益として考えてしまい罪悪感を感じなくなってしまうために、交渉は極めて難航します(1か月滞納してから2か月目に感じる罪悪感と、3年滞納してから3年1か月目に感じる罪悪感を比べてみてください)。

滞納者への対処方法としては、とにかく損失を最小限に食い止めるために「可能な限り早期に明け渡させる」という方法しかないのだと思います。


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