会社を乗っ取られた?!②

 知らないうちに自分が解任され、他人が代表取締役に?!
(完全な第三者が乗っ取りを企むケースもありますが、支配権争いに敗れて追い出された取締役が強硬手段に及ぶというケースもあります。)

実際に、登記手続を止めるにはどうすればよいのでしょうか。

前回お話ししました「仮処分」とは、訴訟に先立ち短期間で仮の決定を行う(権利関係を仮に定める)手続です。
数ヶ月かけて訴訟をやっていたのでは手遅れとなってしまう、という緊急の場合に用いられます。

前回お話ししましたとおり、法務局で何を言っても登記の手続自体は止めることはできず、だいたい1週間くらいで登記は完了してしまいます。
しかし、それまでに裁判所に仮処分を申し立てて受理されれば、法務局に上申書を提出することで、一時的に登記手続を止めることができます。

その後、こちらの主張が裁判所に認められれば、おおよそ1ヶ月以内には仮処分の決定がなされるので、この決定書を法務局に提出することで、めでたく登記申請は却下されます。

仮処分手続の流れですが、第1回目の審理の日が、申立てから数日~1週間後くらいに指定され、当日は双方の当事者が裁判所に出頭した上で、審理が行われます。
特に問題が無ければ、審理手続はだいたい1回か2回で終わり、担保金(金額は、審理の上裁判官により決定されます)を法務局に供託した後、仮処分の決定がなされます。
(担保金の金額は、会社の規模や現在の状況、証拠の内容などを考慮して決定されます。金額の見込みは弁護士にご相談ください。)

(※なお、仮処分とはあくまで訴訟に先立つ仮の手続ですので、原則として、その後に訴訟を起こさなければならず、また、勝訴しないと供託した担保金が戻ってきません(例外はありますが)。
ただし、仮処分手続の中で相手方と和解したり、別途裁判所に申立てを行うなど、訴訟を起こさずに担保金を取り戻す方法もあります。)

以上ご案内したとおり、手続は若干複雑ですが、重要なのは「登記が完了する前」に仮処分の申立てを行うことです(完了してしまった場合にも手段が無いわけではありませんが、若干ハードルが上がります)。
法務局からの通知を受けて、初めて登記の申請があったことを知るわけですから、実際には数日しか猶予が無い上に、最初に法務局で記録を謄写するなど準備の手続が必要ですので、一刻も早い対応が必要です。