会社を乗っ取られた?!①

自分が代表取締役を務める会社で、ある日突然あなたが解任され(あるいは辞任したことになっていて)、知らない人間が新たな代表取締役として登記されている、というケースがあります。
株主総会が開催され、その場で解任されたというのであれば分かりますが、そもそもこの会社の株主は自分しかいないのに。。。

誰かが書類を偽造して登記の申請をしたのは明らかなのですが、そもそもそんなことって可能なのでしょうか。

もちろん、犯罪となる行為なのですが(有印私文書偽造罪・同行使罪、及び電磁的公正証書原本不実記録罪。3ヶ月以上5年以下の懲役。)、それを考えなければ、登記自体は意外と簡単にできてしまうのです。

登記を受け付ける法務局では、登記申請に必要な書類が形式的に整っているかを審査するだけです。本当にその取締役の辞任・解任があったのかや、提出された書類が本物なのか偽造されたものなのかについては、審査をしません。

そのため、登記の申請を知ったあなたが、法務局に行って「あれは偽造書類だから登記手続をストップしてくれ」と言っても、法務局としては、形式的に書類が整っている以上、手続を止めることはできません。
(なお、法務局の運用として、現在の取締役全員の辞任登記が申請された場合、法務局から会社に「貴社の役員全員の辞任登記申請がなされました」という通知が来ますが、上記のとおり、それを見て慌てて法務局に行っても、手続を止めることはできないのです。)

それでは、このような登記申請が行われた場合は、どうしようもないのでしょうか。

もちろん、もとの登記を復活させる訴訟を起こし、勝訴判決が確定すれば、その判決書を法務局に持って行って登記を戻すことはできます。
しかし、これでは手続に数ヶ月かかり、その間に、新しく代表取締役になった者が会社の資産を廉価で売ってしまったり、会社が借金をしたような書類を作り上げたりするなど、会社の財産を流出させてしまう可能性があります(大半はそれが目的)。

そこで、訴訟ではなく「仮処分」という手続で、登記手続を一時的に止めることになります。

ただし、この手続はスピードが命なので、一刻も早く申し立てる必要があります。
次回、この仮処分について詳しくご説明します。