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行方不明の相手に訴訟を起こすには? 公示送達について

投稿日:2017年11月16日


相手方に対し、訴訟の提起や強制執行の申立てなど何らかの裁判上の申立てを行う場合には、相手方の住所を特定しなければなりません。

なぜなら、裁判手続を進めるためには、裁判所から相手方に訴状や決定書などを送達する必要がありますが、相手方の住所が特定されていなければ送達ができないからです。

では、相手方が行方不明の場合には、裁判手続を行うことは一切できないのでしょうか。
これでは、相手方の逃げ得を許すことになってしまいますし、権利を有する者の権利行使が不当に制約されてしまいます。

そこで、このような場合に備え、公示送達という手段が用意されています。

 

送達とは

前提として、裁判手続における送達について説明します。
送達とは、裁判所が当事者に対し、裁判上の書類を手渡すなどして了知できる状態に置くことをいいます。

訴訟であれば、相手方への訴状の送達が完了しないと訴訟が始まりませんし、強制執行であれば、相手方への決定書の送達が完了しないと強制執行の効力が発生しません。
このように、裁判手続を進めるためには相手方への送達を行うことが必須なのです。

送達に関する一般原則は民事訴訟法によって定められています。
送達の方法として、民事訴訟法上は交付送達(手渡しによる送達)が原則とされ、通常は、相手方の住所地宛てに、郵便による特別送達という方法(書留郵便の一種)により行われます。

つまり、裁判上の書類は書留郵便で配達されることになります。

そのため、相手方がその場に住んでいて、かつ相手方がその書類を受領しなければなりません。
本人の一時的な不在などで家族が代わりに受け取る場合はあり得ますが、そもそも表札に別の名前が出ていたりするなど、相手方がそこに住んでいなそうな場合には配達されません。

その他、契約書や登記簿、住民票などに記載されている住所を調べて送達してみますが、それでもだめな場合(それらの住所にも住んでいない場合)には、次に勤務先への送達を試みます。
勤務先を調査したうえで、勤務先(法律上は「就業場所」)あてに送達するのです。

それでもだめな場合(該当者がいないとして受け取られなかった場合)には、いよいよ次の公示送達を検討します。

※ 以上は、それらの住所に住んでいない場合の話です。「そこに住んでいるが郵便を受け取らないため送達ができない」という場合には、付郵便送達という別の手続を行います。
※ これらのほかにも送達の方法がありますが(補充送達や差置送達など)、実務上ほとんど使われないため割愛。

 

公示送達とは

公示送達とは、裁判所に公示をすることで、相手方への送達が行われたとみなされるという送達方法です。

具体的には、管轄裁判所の掲示板に「○○さんあてに訴訟が提起されています。書類を保管してあるので受け取りに来てくださいね」というような内容の掲示を行います。
そして、相手方が受け取らなくても2週間たったら送達が完了したものとみなされます。

日々全国の裁判所の掲示板をチェックしている人はまずいませんから、相手方本人がこの掲示板を見て書類を受け取ることは、まず考えられません。

つまり、相手方にしてみれば、全く知らないところで裁判が起こされ、判決や決定が下されることになるわけです。

 

公示送達を行うための条件

そうなると、この制度を悪用しようとする人がいてもおかしくありません。
相手方の住所を不明ということにしてしまい公示送達の手続をとれば、相手方にとっては訴訟などを起こされたことを知る由もないわけです。
当然、相手方から反論や反証は出てきませんから、自分の提出した証拠だけで有利な判決を得ることが可能になってしまいます。

そんなわけで、公示送達は簡単には認められません。

法律上は、「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」には公示送達をできるとなっていますが(民事訴訟法第110条第1項第1号)、単に「分かりません」では裁判所は認めません。

最新の住民票を取り寄せたうえで現地の建物の調査や近隣住民の聴取り調査などの現地調査を行い、さらに勤務先などその他の送達先がないかの調査も十分行い、「ここまでやったけどだめでした」という報告書を裁判所に提出します。
裁判所がその報告書を確認したうえで、認められればようやく公示送達が可能になるのです。
(実際にどこまでの調査を行うべきか、裁判所とも打合せをしながら検討することもあります)

 

その後の手続

ある裁判手続において、一度公示送達が行われると(例えば訴状の送達)、その裁判手続におけるその後の送達(例えば判決書の送達)も公示送達で行われます。

こうして無事に裁判手続の目的を達成することが可能になるのです。

そのため、相手方の住所が不明の場合でも、あきらめる必要はありません。
(なお、「相手方の住所が分からない」というケースでも、依頼を受けた後に調査を行った結果、現住所が判明することもあります)


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