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無料で土地を貸していた場合、すぐに返してもらえるの? 賃貸借よりも保護されない「使用貸借」とは

投稿日:2017年11月15日


一度土地を貸してしまうとなかなか返してもらえない――という話は聞いたことがあるかと思います。

確かに、現在の法律では借主を強く保護しているため、貸主の方から借主に出て行ってもらうことは、法律上も裁判例上も非常に難しくなっています。
この点で、「なかなか返してもらえない」という話は間違いありません。

しかし実は、強い保護を受けるのは有償で借りていた場合(賃貸借)の話なのです。
無償で借りていた場合(使用貸借といいます)にはこのように強い保護は与えられていません。

同じ土地の利用権であっても、法律上は有償か無償かによって大きく扱いを分けています。

 

土地の利用権の種類

他人の土地を利用するためには、お金を払って土地を借りるという方法が最も多いかと思います。
この契約を賃貸借契約といい、この契約に基づいて土地を利用できる権利は賃借権と呼ばれます。
賃貸借契約については民法に規定されています。

土地の賃借権はさらに、①建物の所有を目的とする賃借権と、②それ以外の賃借権に分かれます。
このうち①建物の所有を目的とする賃借権については、借地借家法という法律で借地権と呼ばれ、さらに強い保護が与えられています。

他方、無償で土地を借りる契約は使用貸借契約といい、これは民法で規定されています。
この契約に基づいて土地を利用できる権利は使用借権と呼ばれます。

(このほかに「地上権」や「永小作権」という権利もありますがここでは割愛します。
なお、地上権のうち建物の所有を目的とするものについては、上記①と同様に借地権として扱われます。)

 

利用権に応じた保護の度合い

上記3つの権利、①借地権、②賃借権、③使用借権のそれぞれの保護の度合いを模式的に示すと、おおまかに

①借地権>②賃借権>>>③使用借権

くらいに保護の度合いが異なります。
体感的には①と②の間もかなり開いている感じがしますが、②と③の間はその比ではありません。

それは、土地の利用ともなれば、もともと長期間の利用を予定していることもあり、借りる側も相当の投資(建物やその他の設備を建築するなど)をするわけですから、貸主が簡単に契約を解除できるとなると(ひいては解除をちらつかせて賃料の増額を迫るなどすると)借主があまりに不利になるからです。
特に、建物の所有を目的とする場合(①)には、借主は生活をおびやかされることになるため、特別に厚く保護する必要がある、というのが法律の考え方です。

そのため、①借地権や②賃借権の場合は、賃料の支払いが多少滞ったくらいでは貸主は契約を解除することができないとされているのです。
また、借主が、法律や契約で禁止されている無断転貸や無断増改築、用法違反を行ったとしても、程度によっては解除することができないとされています。
(これらの考え方を信頼関係破壊の法理といい、判例上、確立した考え方です。要は、大した違反でなければ信頼関係が破壊されていないため解除できない、ということです)

さらに、特に①借地権では、原則として初回の契約期間が30年以上とされ、かつ契約の更新がほぼ強制的ですので、まさに冒頭の「一度土地を貸してしまうとなかなか返してもらえない」という事態になるのです。

これに対し、③使用借権の場合にはこれらの規制を受けません。

 

使用貸借の終了事由

使用貸借契約については民法第593条~第600条に定められていますが、契約が終了する事由は大きく分けて、解除、期間満了、借主の死亡、の3つに分かれます。

解除

借主による用法違反または無断転貸がなされた場合には、貸主は契約を解除することができます。

有償の契約(借地権・賃借権)の場合と異なり、前述したような信頼関係破壊の法理は適用されません
そのため、軽微な違反でも貸主は原則として解除でき、これより契約は終了します。

期間満了

有償の契約(借地権・賃借権)の場合には、期間が満了しても借主が出ていかずに土地を使い続けているのを放置した場合、更新されたことになってしまう(法定更新といいます)ことがありますが、使用借権の場合にはこのようなことはありません。

また、借地権の場合のように更新を強制されることもありません
契約で定めた期間が満了すれば、契約は終了します。

期間を定めていなかった場合は「契約で定めた目的に従い使用及び収益を終わった時」(民法第597条第2項)に契約が終了します。
借りた目的を達成したなら十分でしょう、ということです。

さらに、契約で期間も目的も定めていなかった場合は、貸主はいつでも返還を請求できます(民法第597条第3項)。
したがって、貸主が借主に返還請求をした時点で契約は終了します。

借主の死亡

当然かと思われたかもしれませんが、そうでもありません。
有償の契約(借地権・賃借権)の場合には、借主が死亡した場合には借地権・賃借権は相続されます(例外はありますが)。

これに対して、使用借権の場合には相続がされず、借主が死亡した時点で契約が終了します(民法第599条)。

なお、貸主が死亡した場合は終了しません


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