【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第3回(総論③ 準備)
「契約書の作り方」第3回は総論③として、事前準備について。
前回、以下のように説明しました。
そもそも契約書とは、お互いの約束事を文書として残すために作るもの。
この作業を分解すると、
- 約束事の内容をきちんと決める
- それを正確に文章に落とし込む
という2つに分けられます。
前回は上記2の説明でした。今回は、その前提となる1の話です。
「契約書に何を書くべきかをどうやって決めるか」について解説します。
第1回はこちら:【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第1回(総論① 体裁)
第2回はこちら:【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第2回(総論② 文章の書き方)
打合せ・協議でしっかり内容を詰める
まずは、契約内容について十分に打合せ・協議をすること。
当然ながら決まっていないことは契約書に書けないので、これは必須の前提です。
なぜ協議が不十分になってしまうのか
トラブルになって弁護士に相談に来るケースでは、契約書を見ると、重要な事項があいまいな記載になっていたり、そもそも定められていなかったり、ということがよくあります。
その点について十分協議ができていなかったのが原因ですが、さらに、十分協議できなかった原因は、
- そもそもその事項が重要だと分かっていなかった
- 力関係により相手の条項案をのまざるを得なかった
- 契約締結を急ぐあまり十分に協議する余裕がなかった
- そんな雰囲気じゃなかった(結婚の際に将来離婚する場合の条件を話し合うようで、言い出しにくかった)
といったものが挙げられます。
2番目から4番目は仕方のない部分もありますが、1番目は問題です(特に、こちらだけが重要性に気づいていなかった場合)。
何を協議すべきかを、まず理解する
つまり、何を協議すべきかが分かっていないわけですね。
ただ、「普通はどんなことを契約書に書くのか」をある程度分かっていなければ、「そもそも協議で何を決めておく必要があるのか」が分からないと思います。
「普通はどんなことを契約書に書くのか」については後の回で説明しますので、そちらをご参照ください。
また、協議の際には、契約後の流れや、起こり得る事態を可能なかぎり事前に想定しておく必要があります。
今までの経験や他社のトラブル事例などを参照しましょう。
なお、次に説明するように、必ずしも「想定されるすべての事態について書かなければならない」というわけではありませんが、「想定・協議していたが書かなかった」のと「そもそも想定・協議していなかった」のでは大きな違いがありますので、ご注意を。
何を書くのか/書かないのかの検討
次に、前記の(十分な)協議を前提として、何を書くのか/書かないのかを十分に検討することが必要です。
何でもかんでも全部を契約書に盛り込む必要はありませんし、現実的ではありません。
相手方との関係や自社でとり得るリスクなどに照らして検討したうえで、取捨選択を判断しましょう。
このように十分に検討することは、後のトラブル時の対応や、今後の実務の改善(考えた上での選択であれば、その失敗を共有したり今後の改善策を検討したりすることが容易になる)に役立ちます。
内容が定まらない場合には決め方を書く
なお、いくら協議をしても、タイムスケジュール的に契約締結までに決まらない事項もあります。
決まらないこと自体はやむを得ないとしても、その場合にはせめて決め方(いつ、誰が、どのように決めるのか)は書いておきましょう。
例えば、
「前条の代金の額は、○○までに、●●等を考慮のうえ、甲乙の協議によって定める」
「引渡しの時期及び場所については、別途乙が書面にて指定する」
などのような具合です。