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【初心者向け】契約書の実践的な作り方 第1回(総論① 体裁)

2018年5月27日


突然ですが、急に契約書を作ることになったらどうしますか?
本やネットで契約書の作り方を調べ、ひな型を探してきて、契約の実情に合うように修正して――というのが一般的かと思います。

もちろんそれで問題ないことも多いのですが、内容が少し複雑な契約では、契約書の内容が不明確・あいまいになってしまいトラブルに発展することがあります。
とはいっても、「法的な知識や経験もなく、自分にはうまく作れる自信がない」という方も多いでしょう。

そこで、特に法的知識のない初心者の方向けに、最低限気をつけるべきポイントについて解説したいと思います。
なお、一から作成するのではなく、ひな形をベースに作成する場合を念頭に解説しています。

第1回目の今回は、総論(体裁)について。

紙かデータか、原本かコピーか

契約書は、紙で作る場合と、PDFなどデータのみで作る場合があります。
紙の場合はさらに、記名押印した原本を人数分作成する場合(これが最も多いパターンでしょう)と、原本を1通作って1人がそれを保管しそれ以外の人はコピーを保管する場合があります。

※原本を1部だけにしてそれ以外をコピーとするのは、印紙税を節約するためです(印紙を貼る必要があるのは原本だけなので。後述します)。

データのみで作る場合は、電子署名を付する場合のほか、単に印影の画像を付けて作る場合(この場合はデータのやり取りを行ったメール履歴などを残しておきましょう)があります。

特別な理由がなければ、伝統的な方式に従い「記名押印した原本を人数分作成する」というパターンにしておくのが無難です。

※法的な効力の話でいえば、どの方式でも効力に変わりはありません。

ただし、証拠としての証明力に差が出てきます。
特に、最後のパターン(単に印影の画像を付けたデータ作る場合)の場合は証明力が低いといえます。
そこで、後で相手から「そんな契約は結んでいない」と言われるリスクに備え、データのやり取りを行ったメール履歴などを残しておく必要があります。

表紙・タイトル

表紙はなくても問題ありません。
従来のひな形があればそれに従っておきましょう。

タイトルはそこまで気にしなくてもよいでしょう。
タイトルの内容によって何か法的効力が決定的に変わるということはありませんが、適切なものを付けましょう。

慣れないうちは、単純なものにした方がよいです。
あまり長いのは分かりにくいし誤解しやすいので、特に意図がなければ「売買契約書」「請負契約書」など単純なものにしておけばOKです。
(最悪「契約書」だけでも問題ありません。)

契約書・覚書・念書

「覚書」や「念書」といったタイトルでも法的効力にはもちろん変わりありません。

ただ、「覚書」「念書」は、契約内容を記載する文書というよりは、既に存在する契約の一部を修正する場合に取り交わす文書に付けられることが多いです。
(例えば、「○○契約書の第●条の記載を次のとおり変更する」という内容の文書を、「覚書」として作成することがあります)

基本契約か個別契約か

体裁の話からずれますが、タイトルに関連して、基本契約と個別契約について少し補足。

タイトルに「○○基本契約書」と付ける場合があります。
基本契約とは、継続的な取引関係がある当事者間で、同種の契約が何回も行われる場合に、それらに共通する基本的な事項について定めた契約です。

一方、その一つ一つの契約を個別契約といいます。
(ただ、あえてタイトルに「○○個別契約書」と書くことはほぼありません。)

製本(袋とじ)

契約書の枚数が多く、契印(後述)が大変な場合には製本テープなどを使って製本します。

A4サイズで最初から切れているテープを使うのがやりやすいと思います。
綴じ方や押印(契印)の方法は、写真のようになります(イメージとしてシヤチハタの押印をしていますが、もちろん本物では会社印で押印しましょう)。

詳しくは、以前の記事(あなたの契約書は大丈夫?① 割印・消印・契印の違いと、それぞれの押し方について)にて解説していますのでご参照ください。

印紙

契約書の原本(=朱肉で押印されたもの)が複数ある場合には、その全てに印紙を貼る必要があります。

契約の類型や、契約金額などに応じて必要な印紙額が決まっていますので、国税庁のwebサイトなどで確認するか、税理士に相談しましょう。

一方、コピーやPDFデータ(を印刷したもの)には印紙を貼る必要がありません。
そこで、印紙を節約するために「原本は甲が保有し、乙はコピーを保有」などとする例もあります。

前文

こだわった前文は必要ありません。
「○○株式会社(以下「甲」という。)と、△△株式会社(以下「乙」という。)とは、本日、以下のとおり契約する」だけでOKです。

業務提携契約や販売代理店契約などの際、「相互の発展のため~」のような契約目的を前文に入れることがありますが、法的には全く不要です。
あえて入れるなら第1条に入れる方が書きやすいです。

そうはいっても、実際に目的が書かれている契約書はよくありますが、何のために書いているのでしょうか?
それは、契約に至った背景を書面に残すためです。その動機は、契約を対外的に発表する際のアピールのためであったり、当時の熱い想いを忘れないようにしたいという感情的な理由だったりします。

なお、法的には不要と説明しましたが、全く意味がないわけではありません。

契約条項の解釈で争いになった際の解釈指針として役立つことはあります。この場合「どのような解釈がこの契約目的に適うか」という観点で解釈が定まります(これは法律の条文の場合も同じです)。

ただ、定型的な書き方があるわけではないですし、あまりゴチャゴチャ書いても混乱の元ですので、慣れないうちは「目的条項はなくてもOK」と考えて、本文の条項を分かりやすく作る方に注力した方がよいでしょう。

本文の構成

本文は、基本的な単位である「条」の集まりで構成されます。

「条」は、さらに1つまたは複数の「項」で構成されます。
さらに、「条」や「項」の中に、複数の「号」が記載されることもあります。

後文

後文には、「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が記名押印の上、各1通ずつ保有する。」のように書くのが一般的です。

印紙のところで説明したように、原本をどちらか1通が保有し、他方が写しを保有する場合には、例えば「本契約の成立を証するため、本書1通に甲乙が記名押印の上、甲が原本を、乙が写しを保有する。」のように書きます。

いずれの場合でも、契約当事者の数を増やした場合などに、この後文の部分が以前のままになっていて本文と整合しないケースもありますので、ご注意ください。

日付

実際に押印した日の日付を書きましょう。
持ち回りの場合には、最後の人が押印した日です。

ただ、合意はできているが契約書の作成手続が遅れた場合などに、数日程度バックデートさせることは、実際にはあります。

しかし、何事もやり過ぎはよくありません。
例えば、日付は平成31年3月の契約なのに、不動文字で「令和」と入っていたりすると、それだけで契約書の信用性が疑われます。

当事者間では完全な合意があったとしても、第三者(とか国税とか)が絡む場合にはトラブルの元ですので、安易なバックデートは禁物です。

記名(肩書などの書き方)

株式会社など法人の場合は、

住所
会社名
代表者の肩書+代表者の氏名

のように書きます。代表者の肩書は自社の登記簿の記載に合わせましょう。

株式会社なら、多くの場合は代表取締役です。
この場合、

東京都●区●町●丁目~~
株式会社△△
代表取締役 ○○○○ ㊞

のようになります。

代表者の肩書の表記はほかに、

  • 合同会社:代表社員、業務執行社員
  • 一般社団法人:代表理事
  • 医療法人社団:理事長

というパターンが多くみられます。所属する法人の登記簿を確認し、登記簿どおりの記載をしましょう。

押印の方法

まず、どの印鑑を使うべきかですが、丸い印鑑(多くは実印)でも、四角い印鑑(多くは認印)でも、どちらでも構いません。

一般的には丸い印鑑を使うことが多いでしょう。
印鑑の種類については以前の記事(ハンコの法的効力2 認印・実印・角印・丸印・ゴム印(シャチハタ)の違いや、その他印鑑に関するあれこれ)をご参照ください。

上記は会社の場合の話ですが、個人の場合は、通常よく使う三文判(認印)でよいでしょう。
ゴムではなく、プラスチックや木でできたものです。

実印を使うのは、特別な契約だけです(「実印で」と言われたときだけでOKです)。
なお、この場合、印鑑登録証明書もセットでひつようになります。

次に、印鑑はどう押すかですが、どこに、何のために、どのように押すかについては、以前の記事(あなたの契約書は大丈夫?① 割印・消印・契印の違いと、それぞれの押し方について)をご参照ください。

記名・押印部分(通常は最後にあります)に1か所押印するほか、契約書が複数枚にわたる場合には契印を押します。

契印とは、隣り合うページにまたがるように押すか、あるいは製本テープを使う場合にはテープと契約書の紙にまたがるように押します。


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