企業法務 弁護士の活用法

契約書チェック(レビュー)の難しさ

投稿日:2017年11月2日


「この契約書に問題がないか診てほしい」という相談はよくあります。

この相談、一見簡単なようですが、実はなかなか難しい話なのです。
そのため、弊所でも原則として、スポットの法律相談では契約書のチェックは行っておりません。
法律顧問サービスの範囲の業務としております。

では、契約書チェックの何が難しいのでしょうか。
大まかにいえば、次の2点に集約されます。
 ①どこまで診ればよいかが分かりにくいこと
 ②契約書チェックとは他人の作品の手直しであること

「問題ない」とはどういうこと?

・どの範囲で診ればよいのか

契約書のチェック作業の、一つ目の特徴は「どこまで診ればよいかが分かりにくい」という点です。
言い換えれば、どの範囲で「問題ない」かをチェックすればよいのかが分かりにくい、ということです。

風邪気味で病院に行く場合を想像してみてください。

あなたが担当医だとして「この熱と咳は、何か重大な病気ではありませんか?」ときかれれば、診察したうえで「ただの風邪でしょう」と答えることができます。

しかし、「私の体にどこか医学的な問題はありませんか?」ときかれても困りますよね。
せめてどの症状が心配なのかを言ってくれればともかく、ここで全身の状態をくまなくわけにはいきません。
「心配なら人間ドックに行ってください」としか言いようがないですね。

病院であればこのことはお分かりかと思いますが、実は法律相談では後者のような相談が多いのです。
「この契約書で問題ありませんか?」「この契約書はうちに不利ではありませんか?」というご相談です。

・「問題がない」とは

1ページに納まる簡単な借用書であれば別ですが、たとえ一見単純そうに見える売買契約であっても、契約書の作成にあたっては考慮すべきことはたくさんあります。

引渡しや代金の支払いをどうするか、目的物に欠陥があった場合にどうするか、損害賠償金をどのように設定するか、どのような場合に契約を解除できるか…
特に企業間の取引では金額が大きくなることもありますから、細かい取極めをしておくのが通常です。

ところで民法上は、売買契約は「何を売るか」「いくらで売るか」が定められていれば成立します。
つまりこの2点が定められていれば法律上は問題ないといえます。

そこで、例えばある会社が中古のビルを購入するに当たり、先方から出された契約書案について相談に来たとして「細かい条項はさておき、目的物と値段がちゃんと書いてあるから法的に問題なく売買契約は成立します」という回答はどうでしょうか。
これでは使い物になりませんね。

逆に、引渡しや代金支払いの時期・条件や、欠陥があった場合の対応、違約金の条件など、細かく突き詰めようとすればきりがありません。
考え得るあらゆるトラブルを想定した条項を盛り込もうとすれば、とても数ページでは納まらなくなります

さらに、「うちに不利ではないか?」という相談も同様です。
法律で定められているのと同じ義務の負担であれば全く問題ないともいえます。

他方で、可能な限りこちらに有利にしようとするならば、全ての義務を相手方に負わせ、かつ相手方のみに違約金を課すようにしておくべき、となってしまいます。
が、もちろん相手方がそんな条件をのむわけがありません。

・適切な契約書とは

要は取捨選択とバランスの問題なのです。

本当の意味で契約書のチェックするためには、相手方との関係や契約の交渉過程のほか、
 ・クライアントが普段行っている事業内容
 ・その領域での取引慣行
 ・クライアントが重視するポイント
 ・過去にあったトラブル
など、契約の背景にある事情を知る必要があります。

そこから重点的に診る部分を取捨選択し、かつ相手方との関係によるバランスを考慮して、

「契約書の●条には□□というリスクがあります。可能なら変更した方がよいですが、問題となる可能性は低いため、最悪このままでも大きなトラブルにはならないでしょう。
他方、△条には○○という問題点があり、ここは絶対に変更すべきです。
その他の点には特に問題はありません。」

というような回答が可能になるのです。

このように「問題ない」かどうかは簡単に判断できないのです。
ごく簡単な契約書でない限り、1~2時間程度のスポットの法律相談ではここまでできません。

他人の作品の手直し

長くなりましたが2点目です。
契約書のチェック作業のもう一つの特徴は、他人の作品の手直しであるという点です(クライアントが作成した契約書のチェックの場合)。

例えば料理を思い浮かべてみてください。
誰かが作った煮物のチェックを頼まれるとします。

まずは味見をして、何が足りないか・多すぎるのかを考えますよね。
そのうえで、適切な味付けになるよう調整を加えます。
具についても、足りないものがあれば足しますし、変なものが入っていれば取り除きます。

このような調整は、元々入っていた材料とのバランスを考えながら行う必要があります。

一部の芋が煮崩れてしまっていたらどうでしょう。
大きな問題ではないとしてそのまま出すか、新たな芋を投入するかを判断します。

こうして何とかして、人に出せる料理に仕上げるのです。
プロとして最低限のクオリティはもちろん保っていますが、最高の料理でないことは確かです。
最初から自分で作った方がより早くより美味いのは間違いありません。

たとえが長くなりましたが、契約書も同じです。

その業界に出回っている一般的なひな形ならともかく、オリジナルのものだったり特殊な契約だったりしますと「そもそも何が入っていて何が入っていないか」をチェックするのにまず時間がかかります。

また、条項を修正・追加・削除するには常に元の条項との兼ね合いを考えなければならないため、実は自分で最初から作った方が早かったりします。

さらに、文体や言葉の遣い方についても元の条項に配慮する必要があります。一部の条項だけやたら厳密になっていたりすると違和感がありますからね。
上の例で、後で投入した芋だけ味が際立ってたらバランスが悪いですよね(もちろん、見栄えだけの問題ですのでそれが法的に必要なら違和感は無視しますが)。

 

このように、他人が作った契約書を手直しするのは手間がかかりますし見落としのリスクもありますので、弊所では、契約書チェックは法律顧問サービスの一環として行っています。

よく使う類型なら弊所のひな型(過去に使った条項例など)をお渡ししてそれをベースにしてもらうか、それをベースにしてこちらで作ってしまう方が早いし確実だからです。


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