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収入印紙を貼っていない契約書でも有効?

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契約書や領収書など、一定の文書には収入印紙を貼らなければならないとされています。

では、契約書を作成したものの、何らかの事情で印紙を貼らなかった場合には、その契約の効力はどうなるのでしょうか。
契約は有効なのか、あるいは印紙を貼るまでは無効なのでしょうか。

このような相談を受けることがありますが、答えは「有効」です。

なぜなら、契約当事者の間の法律関係(私法上の法律関係)と、国との間の税法上の法律関係(公法上の法律関係)は全く別の問題だからです。
当事者間においては、ある契約をするという意思が表示がされていれば十分で、印紙税を納めたかどうかは別問題なのです。

以下、詳しく見ていきましょう。

印紙税とは

まずは、印紙税について簡単におさらいしましょう。

印紙税とは、一定の文書を作成したことに対して課せられる税金です。
どのような文書に対して印紙税が課されるかについては、印紙税法により次のとおり定められています。

印紙税法 別表第一(抜粋)

1   不動産等の譲渡、地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡、消費貸借、運送に関する契約書
2   請負に関する契約書
3   約束手形又は為替手形
4   株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託若しくは特定目的信託の受益証券
5   合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
6   定款
7   継続的取引の基本となる契約書
8   預貯金証書
9   貨物引換証、倉庫証券又は船荷証券
10 保険証券
11 信用状
12 信託行為に関する契約書
13 債務の保証に関する契約書
14 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
15 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
16 配当金領収証又は配当金振込通知書
17 金銭又は有価証券の受取書
18 預貯金通帳、信託行為に関する通帳、銀行若しくは無尽会社の作成する掛金通帳、生命保険会社の作成する保険料通帳又は生命共済の掛金通帳
19 第1号、第2号、第14号又は第17号文書により証されるべき事項を付け込んで証明する目的をもって作成する通帳
20 判取帳

(詳細はこちらの国税庁のwebサイト(PDF)をご参照ください)

よく目にするのは、第17号の受取書(領収書)のほか、第1号の売買契約書、金銭消費貸借契約書や、第2号の請負契約書などでしょうか。
ちなみに、弁護士に依頼する場合に作成する「委任契約書」は上記に含まれておりませんので、印紙税は発生しません。

そして、印紙税の納付方法については、文書作成時までに、その文書に収入印紙を貼って消印を押さなければならない、と定められています。
(細かい話ですが、この時に押す印は「消印」といいます。「割印」ではありません。「割印」は複数の同一文書にまたがって押す印です)

印紙税法第8条(印紙による納付等)
第1項 課税文書の作成者は、……当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙……を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。
第2項 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

なお、印紙税の納税義務者(印紙税を支払わなければならない人)は、当該文書の作成者です。
契約書であれば、そこに署名・押印した当事者全員が連帯して支払わなければなりません。

通常は、印紙分を誰が負担するのかを契約で定めていることが一般的です。

印紙を貼らないとどうなる?

契約書等を作成したものの印紙を貼らなかった場合はどうなるか。

印紙を貼るべきなのに貼らなかったということは、法律で定められた税金を納めなかったということですので、当然追徴されます。
過怠税といって、貼るべきだった印紙の金額に加え、その2倍の金額が追徴されます。つまり、合計で印紙の額の3倍の金額を支払わなければなりません。
(なお、「貼ったけど消印をしていなかった」という場合でも過怠税が追徴されます。この場合の追徴額は印紙の額と同額です)

バレないと思って印紙を貼らずにいても、税務調査の際に発覚し、けっこうな金額をまとめて追徴されることがありますので、くれぐれも印紙の貼り忘れには注意しましょう。

 

このように、契約書に印紙を貼らないということは、税法上は違法です。
つまり、国との関係では違法ということになります。

では、当事者同士の関係でも違法ということになるのでしょうか?

公法上の法律関係・私法上の法律関係

印紙税法のような税金関係の法律は、国と国民との間の権利・義務を定めた法律です。
このような、国との間の権利・義務に関する法律を総称して「公法」といいます。
公法にはほかに、行政上の許認可に関する法律や、刑罰に関する法律などが含まれます。

これに対し、民間人同士の権利・義務を定めた法律を、総称して「私法」といいます。
契約関係などを定める民法が代表的です。

そして、ある契約が有効かどうかという問題は、この「私法」の領域における法律関係の問題です。
公法における法律関係の問題とは、関係ありません。

 

契約当事者間の関係についてみてみますと、民法においては、契約が有効に成立するためには、当事者がその内容の契約を締結するという意思表示をしていれば十分です。
契約書に当事者の有効な署名・押印がなされていれば、その意思表示は証明できますから、その契約は有効に成立したといえます。

契約が有効かどうかの問題と、公法上の問題である税金を納めたかどうかという問題は関係ありません

したがって、契約が有効に成立していれば、契約書に印紙を貼っていなかったとしても、契約の効力という意味では問題はないのです。


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