いろいろな話 法務一般

NHK受信料裁判についてのまとめ・前編 なぜ受信料を払う必要があるのか

投稿日:2017年3月30日


(※追記:2017年12月6日、最高裁判決が言い渡されました。
最高裁判決についてはこちらの記事(NHK受信料問題 最高裁判決を前提とした受信料の徴収実務について)をご参照ください)

NHKが受信料を請求した事件の判決が話題になっていますね。

ビジネスホテルの客室などに設置されたテレビの放送受信料をめぐり、NHKが東横インと関連12社に未払い分の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁(中吉徹郎裁判長)は29日、ほぼ請求通り約19億2900万円の支払いを命じた。

東横インに19億円支払い命令=ホテル客室テレビの受信料-東京地裁(時事通信)

NHKは、正当な理由が無いのに受信料を支払わない人に対し、2006年ころから訴訟などの法的手段をとるようになったようです。

最近では、ホテルのように多数のテレビを設置している事業者に対する請求が、(金額が多額に上ることもあって)話題になっているように思います。

また昨年(2016年)、受信契約がいつ成立するのかが争われた訴訟で、最高裁が大法廷で審理することが決定したことも話題になりました。
NHK受信料契約いつ成立? 大法廷が判断へ(日経新聞)

上記の記事では、NHKはこれまでに200件以上の訴訟を提起したとされていますが、全国の訴訟ではどのような点が議論されているのでしょうか。

今回の前編では、まず受信契約の締結義務についておさらいしてみます(後編はこちら)。

受信料の支払義務の根拠

「テレビを持っている者はNHKの受信料を支払わなければならない」とよくいわれますが、そもそもどのような根拠に基づくのでしょうか。

この点について規定しているのが放送法です。

放送法第64条(受信契約及び受信料)
第1項 協会(※注:NHKのこと)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない(中略)
第3項 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(以下略)
※全文はこちら

この規定はもともと放送法第32条として定められていましたが、2010年の改正により第64条に移されました。主な内容は変わりません。

第1項の要素を以下の3つの要素に分解してみると、

①NHKの放送を受信できる受信設備を
②設置した者は
③NHKと受信契約を締結しなければならない

となります。
そしてこの契約に基づく義務として、

④受信契約を締結した者は、契約に従いNHKに受信料を支払わなければならない

ということになります。
なお、受信契約の内容は、総務大臣の認可(前記64条3項)を受けた「日本放送協会放送受信規約」に定められているとおりです。

これらのうち④は問題ないですね。「契約をしたら契約に従った料金を支払わなければならない」というのは当然のことです。
そして、支払わなければ訴訟を起こし、判決に基づいて強制執行を行うことができます。
つまり、法的手続に従って支払いを強制することができます。

しかし、問題はその前提となる③です。
任意に契約締結に応じてくれれば問題がありませんが、拒否された場合にNHKとしては「契約の締結」を強制することができるのか。多くの訴訟ではこの点が問題となりました。

受信契約の締結義務

先ほど挙げたように、放送法により

①NHKの放送を受信できる受信設備を
②設置した者は
③NHKと受信契約を締結しなければならない

とされています。

ここではまず③の前提となる①②について簡単にみてみます。

まず①の「NHKの放送を受信できる受信設備」についてですが、これは普通のテレビに限らず、TVチューナー付きPCや(ちょっと古いですが)いわゆるワンセグ携帯(※ただし後述②)など、およそテレビ電波を受信して映像を視聴できるような機械であれば当てはまります。
PC用の単なる液晶モニタなど、電波を受信できないものはこれに当たりません。

では仮に「NHKだけ写らないテレビ」というのがあったらどうでしょうか。技術的にNHKを見ることが絶対にできないのであれば、上記に当たらないと思います。
ただし、壁の中の配線にNHKの周波数のみを遮断する装置(カットフィルター)を設置していた事例では、それを撤去すればNHKを見れること等を理由に上記受信設備に当たるとされ、受信契約を締結する義務があるとされた例があります(東京地裁2016年7月20日判決)。

次に②の「設置」ですが、普通にテレビを部屋に置いてあれば「設置」に当たります。
他方、ワンセグ携帯を持っていた場合については、「設置」ではなく「携帯」に当たるとして、受信契約を締結する義務はないとされた例があります(さいたま地裁2016年8月26日判決。ただしNHKが控訴しました)。

以上の①②を満たす場合には、NHKと受信契約を締結する義務が発生します。

契約締結を強制する手段

では、法律(放送法)上契約を締結する義務があるとして、それに応じなかった人に対してはどのような強制手段があるのでしょうか。

契約に基づく支払いを強制するのと異なり、どのように契約の締結自体を強制するかについては法的構成が統一されているわけではありません。
また、そもそもこのような義務を定めた放送法自体が憲法違反ではないかとして、上記の点も含め全国の訴訟で争われています。全国といってもほとんど東京ですが。

そこで最高裁の大法廷が注目されているのです。

次回はこの点と、その他付随論点についてご説明します。


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