実印と一緒に持ち歩いてはいけない物
ハンコは私たち日本人の生活には欠かせません。
シャチハタのようなゴム印や、100円で買えるような三文判は、日常生活でよく使うことと思います。
それに加え、大人になってからは「実印」が必要になることもありますね。
この実印ですが、重要な契約のときに必要だというイメージをお持ちの方が多いと思います。
また、実印が必要なときは併せて印鑑登録証明書も必要になる、ということもご存知かと思います。
しかし、実印がなぜ重要だと言われるのか、法的にはどういう意味を持つのかについては、誤解も多いようです。
そこで今回は、「実印」とは何なのか、その法的な性質などについて見てみます。
そもそも「実印」とは何か
中には、実印のことを「フルネームとか下の名前で彫ってあるちょっと大きめのハンコ」だと誤解している人もいますが、これは違います。
実印とは、「市役所等に実印として登録したハンコ」のことをいいます。(なお、正確には、印鑑登録原票に登録された印影を顕出させる印章のことをいいます。末尾の用語例も参照。)
なので、どんな仰々しいハンコも印鑑登録していなければ認め印と同じですし、逆に普通に見えるハンコでも、登録されれば実印です(ただし登録には条件があり、100円ショップで売っているようなのは登録できませんが)。
実印にはどんな法的効力があるのか
最初に言ってしまうと、実印を押したことにより何か特別な法的効力が生じるわけではありません。
実印であることの意味は、裁判における信用性にあるのです。
例えば、相手の名前が記載されてる借用書があるものの、相手が「そんな借用書は書いた覚えはない」と主張しているとします。
この事例で、本人の直筆の署名が無く、名前部分にプリンタの印字しか無かったとしても、そこに実印が押され印鑑登録証明書が添付されていれば、本人の署名があったのと同じだけの信用性があります。
そのため、本人が「書いた覚えがない」と言い訳したとしても、その借用書は本人が書いたものだとされます。
印鑑登録証明書は、本人の印鑑カードと身分証明書、または印鑑カードと暗証番号の入力が必要であることから、通常は本人しか取ることができません。
そして、これにより、使用されたハンコが本人のものであることが証明されます。
したがって、実印と印鑑登録証明書のセットがあることにより、本人が自分のハンコで押印したということが証明されるのです(他方、実印が押してあっても印鑑登録証明書がなければ、信用性は普通のハンコが押されたのと同じレベルです)。
危険なセット
そこで、この二つをセットで紛失すると極めて危険です。
悪用されればどんな文書を作成されてしまうか分かりません。自動車や不動産の所有名義を変更することもできてしまいます。
そのため、実印と印鑑登録証明書を同時に持ち運ぶ際には十分注意することはもちろんですが、印鑑登録証明書は必要になった際にその都度取得するようにして、余分に持っておかないことです。
もし保管する必要がある際には、実印と印鑑登録証明書は別の場所に保管しましょう。
また、万一この二つを同時に紛失してしまった場合には、すぐに警察に届けを出しましょう。
その上で、直ちに弁護士・司法書士にご相談ください。不動産の名義変更などを阻止する手段はありますし、早ければ早いほど手は打ちやすいので。
まとめ
以上のように、実印と印鑑登録証明書のセットは非常に強力で、悪用されてしまえば偽造文書が真実のものと認定される可能性は高いです(ひっくり返したことはありますが、そのハードルは高いです)。
取り扱いには十分注意しましょう。
おまけ
ついでに、印鑑にまつわる用語の意味について、誤解が多い点を以下に挙げました。各用語の意味は、正しくは次のとおりです。
印章:木や石、金属などでできたハンコ本体
印影:印章(ハンコ)を押してできた模様のこと。朱色で押されることが多いですね。
印鑑:印章(ハンコ)のことを「印鑑」と呼ばれることが多いですが、印鑑とは、正しくは印影と所有者を登録した名簿のことです。印影が誰のものかを確認するためのものです。