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【初心者向け】契約書の実践的な作り方 かっこ悪くてもよいので、これだけは気を付けてください!

2018年5月27日


突然ですが、急に契約書を作ることになったらどうしますか?
本やネットで契約書の作り方を調べ、ひな型を探してきて、契約の実情に合うように修正して――というのが一般的かと思います。

もちろんそれでも問題ないことも多いのですが、内容が少し複雑な契約では、契約書の内容が不明確・あいまいになってしまいトラブルに発展することがあります。
とはいっても、「法的な知識や経験もなく、自分にはうまく作れる自信がない」という方も多いでしょう。

そこで、特に法的知識のない初心者の方向けに、最低限気をつけるべきポイントについて解説したいと思います。
今回は、総論と各論に分けています。

 

【総論】分かりやすく書く

では、契約書にはどういう条項をどういう表現で入れればよいのか――という具体的な内容に入る前に、まずは総論。

実は、契約書を作るにあたり最も気を付けなければならないのが、分かりやすく書くという点なのです。

というのも、現実の紛争では、法的な効力うんぬん以前に「契約書に何が書いてあるのかよく分からない」ということが原因になることも多いからです。

例えば、契約上の義務がよく分からない書き方で書いてあるために「契約上の義務を履行した」「いや、してない」という争いになってしまうのです。
このような争いは、契約書の内容を分かりやすく記載しておくことで防ぐことができます。

契約書は互いの約束を紙に書いたものですが、何を約束したのかが読み取れなければ、契約書の本来の意味がありません。

その点で、契約書の作成には、法的知識よりも日本語力が最も重要といえます。

分かりやすく書く、というのは法律知識がなくても改善できる点ですので、初心者の方は、まずはここから改善してみるのがよいでしょう。

では、分かりやすく記載するためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

ポイントは次の3点です。

  • 契約内容を理解する
  • 正確な表現を使う
  • 見た目にはこだわらない

しばらく抽象的な話になりますが、重要な点ですのでお付き合いください。

契約内容を理解する

まず、分かりやすい記載をするには、自分が契約内容を理解していることが前提となります。
内容を十分に理解していなければ、そもそもそれを文章に落とし込むことができません

当事者が契約内容を理解していないことなってあるのか?とお思いかもしれませんが、よくある話です。

例えば業務委託契約で、「A」という作業を依頼する内容の契約書であった場合に、「Aに付随するA'という作業は契約内容に入っていますか?」などときくと、「はっきりと話し合ったわけではないけど、Aといえば普通はA'も含むので、契約内容に入っていると思う」などの答えが返ってくることがあります。
A'を含むのかどうか、当事者間であいまいなまま契約を進めてしまったケースです。

当事者が、A'を含むのかどうかをはっきり理解しないまま進めてしまったので、はっきりしない契約書になってしまったわけです。

契約内容を理解していなければ、それを適切に反映した契約書など作れるわけがありませんので、まずは契約内容の理解が大前提になります。

また、逆にいえば、契約書を正確に作ろうという観点が頭にあれば、交渉に際して「どのようなことを話し合っておく必要があるか」ということも明確になります。

後述するポイントを参考にしながら、まずはこれから締結する契約の内容をしっかり理解してください。

正確な表現を使う

契約内容を十分に理解したら、次はそれを正確に文章に落とし込む必要があります。

そのために注意すべきポイントは、次の3点です。

①正しい文法を使う

正しい日本語を使用しなければ、意味は正確に伝わりません。
日本語の文法は必ず守りましょう。

中でも、主語と述語は必ず対応させたうえで目的語は必ず入れることが重要です。「誰が・何を・どうする」というのは文章の基本的な要素です。

特に、1文が長過ぎるとこの点を見落としがちです。
文法を意識しやすくするためにも、後に述べるように1文は短くすべきです。

②一義的な言葉を使う(多義的な言葉は使わない)

表現方法によっては、その文章の意味が何通りにも読めてしまうことがあります。

しかし、契約書は、約束したことの証拠を残すために作るものなのですから、第三者(特に裁判官)が読んで分かるように記載しなければなりません。
つまり、誰が読んでも一つだけの意味になるように記載しなければならない、ということです。

例えば、「誠意をもって」とか「速やかに」などという言葉はさまざまな意味に(都合よく)取れるので、特に理由がない限り使わないようにしましょう。
また、単に「この契約は更新することができる」と記載している場合、甲・乙どちらかが請求すれば更新できるという意味なのか、あるいは甲と乙が合意すれば更新できるという意味なのか、この記載だけでは分からず、やはり紛争の元になってしまいます。

③一つの意味には一つの言葉を

上記②とは逆になりますが、一つの意味を表わす単語は、必ず一つだけにしてください。
その契約書の中では表記を統一する必要があります。同じ意味を表わす単語がいくつも登場しないようにしましょう。

例えば、「契約期間を経過した後にも契約が継続する」という状態を表わすのに、同じ契約書内で「更新」「継続」「延長」など複数の単語が出てくると、読む方は混乱します。
というより、通常は、これらの単語を別な意味だと考えます。

見た目にはこだわらない

上記のとおり、作成にあたり優先すべき点は正確性です。
そのためには、文章の見た目の美しさや格調(?)などはいったん忘れましょう。

何となく契約書というと、ものものしいような文語っぽい表現が使われるというイメージがあるかもしれません。
法律の条文もそのような傾向がありますし、ひな型を使う場合には全体的にそのような表現になっていることも多いでしょう。

しかし、契約書作成に慣れた人ならともかく、そうでない人が無理して法律の条文のような表現を使おうとすると、往々にして意味が分からなくなりがち(そして不必要に長くなりがち)です。

契約書の目的はあくまで「約束した内容を正確に紙に残す」ことにあるのですから、まずはそれを最優先し、見た目や表現の格調などはまずは無視しましょう。
多少稚拙っぽく見えたとしても、正確さ・分かりやすさを重視してください。

ポイントは次の2点です。

①可能な限り短文で

前記の「正しい文法」ともかかわりますが、1文が長いと文法の間違いに気づきにくく、意味不明になりがちです。

多くの要素を入れなければならないのであれば、短く切ってしまうべきです。

そうすると、ブツ切りの文が連続することになり、確かに見た目は悪くなってしまいますが、内容の正確さには代えられません。

②箇条書きを利用する

上記①ともかかわりますが、1文に複数の条件などを入れなければならないときは、無理に1文にせず箇条書きを使った方がよいことがあります。

例えば、「甲は、乙が○○したときまたは●●したときには、~~とする。」という内容であれば、

「甲は、次の場合には~~とする。
 ① 乙が○○したとき。
 ② 乙が●●したとき。」

と書き換えた方が分かりやすくなります。

 

【各論】契約書に記載すべき内容

以上の「分かりやすく正確な文章を書く」ということを土台にしたうえで、次に、契約書に何を書くべきかを検討しましょう。

とはいっても、厳密にいえば記載すべき内容は契約ごとに異なりますし、自分に有利な契約書にしようと思えばいくらでも条項が増えてしまいます。

そこで、以下では初心者向けに、「最低限これだけは記載すべし」というポイントをお伝えします。

依頼内容

ほとんどの契約は、「何かを依頼して、その対価として代金・報酬を払う」という類型であり、この場合は「依頼内容」と「代金額」が契約の本質です。
この2点だけは絶対におろそかにしてはなりません。

まず依頼内容についてです。
単純に物を売る・貸すなどの契約では、対象となる物をしっかり特定しておけば問題ありません。
これに対し業務委託契約などの請負契約や、委任契約の場合には注意が必要です。

誰が」「いつまでに」「どこで」「何を」「どのように」「どうする
という点を、必ずもれなく記載するように心がけてください。

・中核部分

そのうち特に「何を」「どうする」の部分が重要です
以上の点があいまいだと、「契約上の義務は果たした」「いや果たしていない」という争いが生じ、代金不払いなどのトラブルに発展してしまいます。

この点については「どういう作業を依頼に含めるのか」という観点だけでなく、「どういう作業を依頼に含めないのか」という観点からの記載が重要です。
また、依頼された何らかの作業を行えばよいのか、あるいは何らかの成果物の作成・提出まで行うのか、に気をつけてください。

もちろん、事前によく話し合ってその範囲を決めておくことが大前提です。
契約書に具体的に記載することをイメージながら、詰めておくべき点にもれがないかを確認してください。

・その他について

「どのように」の部分については、依頼の内容が細かくなる場合(たとえば仕様や細かい手順などを定める場合)には、全てを契約書本文に書かず、「別紙●●書に記載のとおり」とすることもあります。

「どこで」については通常は受託者に任せられているため書かないことも多いですが、一定の業務委託契約では、クライアント社内での作業を求められることもあります。
この場合は、必ずそこに行かなければならないのかや、行かなければならないとすれば曜日・時間などを定めておくとよいです。

代金額

もう一つの本質部分は、代金額です。
複雑にしてしまった結果、分かりにくくなっているケースもありますので注意が必要です。

ポイントは、
「いつ」「どうやって」「いくら」
を支払うかです。

「いつ」「どうやって」はあまり問題ありませんが、「いくら」(金額)については必ず金額または計算方法を明示しましょう。

また金額だけでなく、その代金(報酬)が依頼内容の業務と対応しているかという点も意識してください。
上記「依頼内容」の項目と関係しますが、「依頼の内容はこの範囲」ということと「これに対応する代金はいくら」ということが明確に定まっていないと、例えば追加作業が発生した際の代金負担でトラブルになります。

また、依頼内容そのものの代金と、付随する費用(交通費やサンプル作成費等の実費)の扱いも明記しておきましょう。

 

上記の「依頼内容」と「代金額」が契約書の中核的な内容ですので、せめてこの2点だけは十分に検討して記載してください。
以下では、その他の重要項目について説明します。

契約期間・更新

継続的な契約であれば、必ず契約期間を定めているかと思います。

その契約期間が満了した時に、契約が当然に終了するのか、または延長や更新があり得るのかについても契約で定めておく必要があります。

甲または乙の請求により延長・更新するのか、甲乙間の協議によって延長・更新することができるとするのか、またはいずれかが終了させる旨を通知しない限り自動更新するのかなどのパターンがありますので、その旨を契約書に記載しておきましょう。

契約の中途終了(解除・解約)

契約期間内に契約を終了させることがある場合には、その旨を記載しておきましょう。

特に、相手方の債務不履行がなくとも、一方の請求で理由なく契約を終了させることができるとする場合には、その旨を記載しなければなりません。

違約金

相手方の債務不履行により損害が発生した場合には、特に契約書で定めなくとも損害賠償を請求することはできます。
もっとも、その場合には請求する方が損害の内容が金額を立証する必要があります。

そこでこの手間を避けるために、あらかじめ一定の場合には一定の金額を違約金として支払うという旨を定めておくことがあります。

必要があれば、契約書に金額または計算方法(例えば代金額の●%、など)を定めておきましょう。

成果物の権利

契約の内容によっては、依頼の過程で製品や著作物を製作することがあります。

その場合の成果物の権利は、一般に制作した人に帰属することが多い(ただし、権利の内容によります)ため、依頼者の方に帰属させる場合には、その旨を定めなければなりません。

もっとも、この点は若干応用的な話ですので、詳細は割愛します。

 

まとめ

初心者向けにしては細かいところまで書いてしまいましたが、重要なのは、

・十分な打合わせで契約内容を理解する。

・法律知識よりもまず日本語力。分かりやすく正確な表現を。

・特に依頼内容と代金額の部分は、おろそかにせず細かく記載する。

の3点です。

細かい知識は経験によって身についていきますので、最初のうちは、特にこの3点を強く意識して契約書を作成してみてください。


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