マンションの廊下に物を置いてはいけません! 違反者への対処方法

マンションの廊下に私物を置いている人がいますが、これって違法じゃないの?――という相談を受けることがあります。
傘や新聞紙などの小さい物から、ベビーカーや自転車まで大小さまざまな物が置かれているようです。

もちろん、これらの行為は管理規約では禁止されていますよね。

しかし、たいがいは物を置いている人に注意しても「このくらいはいいじゃないか」「ほかの人もやっている」などと開き直り、らちが明きません。
中には「ポーチやアルコーブはうちが自由に使える」という独自の理論を述べてくる人もいます。

そうはいっても、このままでは美観上の問題のみならず、避難を妨げることによる安全上の問題も生じます。

そこで、このような常習犯に対しては、物を置くことが管理規約のみならず法律にも違反していることを伝え、毅然とした対応をしましょう。
改善がみられなければ、強制手段も検討してください。

 

なぜ廊下に物を置いてはいけないのか

もちろん、契約や管理規約によって禁止されているからという理由があるのですが、それだけでなく勝手に物を置く行為は、民法や区分所有法、消防法に違反する行為なのです。

分譲マンションと分譲でないマンションとでその理由は若干異なりますが、結論は同じです。

分譲マンションの場合

区分所有法上、廊下は共用部分とされており、専有部分と異なりそもそも居住者が自由に使えるわけではありません。
管理規約の定めに従った利用方法しかできません。

そして前述のとおり、標準的な管理規約では廊下に物を置くことは禁止されていますので、これに違反するということは区分所有法上も違法な行為となるのです。

これはポーチやアルコーブ(ドアの前にある、廊下から少しくぼんだ部分のスペース)でも同じです。
(ただし、扉付きのポーチの場合には別に扱われている場合があります)

また、区分所有法第6条では、所有者または占有者は「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めており、置いている物の程度によってはこの規定にも違反することにもなります(詳細は後述)。

 

さらに、廊下に物を置くことは、区分所有法のみならず消防法の問題にもかかわります。

消防法の規定により各都道府県が火災予防条例を制定していますが、条例では、避難に支障となる物を廊下に置いてはならないという旨が規定されています。
例えば東京都の火災予防条例では、以下のように定められています。

第53条の2(火災の予防又は避難に支障となる物件を置くこと等の行為の禁止)
 何人も、令別表第一に掲げる防火対象物において、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
 ① 避難施設に、火災の予防又は避難に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。
 (以下略)

マンションなどの共同住宅はここでいう「令別表第一に掲げる防火対象物」に含まれます。
また、建築基準法や消防法において「避難施設」には廊下を含みます。

なお、具体的にどの程度の大きさの物を置くと「避難に支障となる」といえるのかについては具体的な規定はありません。
もっとも、マンション(その他の共同住宅)の通路の幅については、建物の規模に応じて、建築基準法施行令に基づく各都道府県の条例(東京都であれば「東京都建築安全条例」)により定められており、これが一つの目安になると考えられます。

少なくとも、物を置いたことによって通路の幅が条例で定められる範囲よりも狭まるようであれば「避難に支障となる」と認定されるでしょう。

分譲でないマンション(賃貸)の場合

分譲でないマンションに賃貸で住んでいる場合は、話は簡単です。

部屋を借りた人には、もともと廊下に物を置く権利がありません。
廊下は、部屋に出入りするために通行することが認められているだけですので、廊下に物を置いて占有することは、オーナーの所有権を侵害することになります。

これはポーチやアルコーブでも同じです。
契約上、自由に利用できるのは居室内(=ドアの内側)だけとされているためです。

また、消防法の問題は、分譲マンションの場合と同じです。
避難に支障となる物を廊下におけば、消防法(に基づく条例)違反となります。

なお、前述の火災予防条例の規定では「何人も」と規定されていることから、所有者も対象となります。

 

止めない人への対応策

では、いくら警告しても止めない人に対しては、何らかの強制手段はあるのでしょうか。

分譲マンションと分譲でないマンションとではその方法は異なります。

分譲マンションの場合

分譲マンションの場合は、実はなかなか難しいのが現状です。

前述したとおり、区分所有法第6条では、所有者または占有者は「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めています。

そして、ある所有者(区分所有者)がこの規定に違反した場合、他の所有者全員または管理組合法人は、次の措置をとることができます。

・その行為の停止などの請求(第57条)
・専有部分(居住部分)の使用禁止請求(第58条)
・専有部分(居住部分)の競売請求(第59条)

停止請求はともかく、使用禁止請求(居室を利用させないとう措置)や競売請求(区分所有権を競売にかけてしまうという措置)はかなり強力です。
そのため、後の2つでは、その行為による「区分所有者の共同生活上の障害」が著しいことや、「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である」ことといった条件が必要になります。

廊下に少し物を置いただけでこの条件を満たすことはないでしょうから、現実にはなかなか使えない手法とはいえます。
少なくとも、前述の消防法に違反するくらいひどいケースでないと認められることはないでしょう。
(これらの規定が適用され報道された例では、勝手に保育所を開設したケースや、暴力団事務所として使っていたケースなどがあります)

もっとも、停止請求を含め、警告としては役立つのではないでしょうか。

分譲でないマンション(賃貸)の場合

分譲でないマンションの場合は、やはり話は簡単です。

賃貸借契約に違反するとして、契約を解除すればよいのです。

もちろん、「信頼関係破壊の法理」によって軽微な違反では解除が認められないことがありますから、しっかりと継続的な要求や警告を行っておく必要があります。