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相手が裁判書類を受け取らない場合でも訴訟を起こせるか? 付郵便送達について

投稿日:2017年11月20日


以前の記事(行方不明の相手に訴訟を起こすには? 公示送達について)では、相手方の住所が不明の場合に訴訟などを起こす方法(公示送達)について解説しました。

住所が不明の場合には送達ができず、そのため訴訟などを起こすことが不可能になってしまいかねないという不都合があるので、そのような場合に備えて公示送達という方法がある、というお話でした。

が、送達ができないケースは住所が不明の場合だけではありません。

 

送達ができないもう一つのケース

上記の記事で、送達について以下のとおり説明しました。

訴訟であれば、相手方への訴状の送達が完了しないと訴訟が始まりませんし、強制執行であれば、相手方への決定書の送達が完了しないと強制執行の効力が発生しません。
このように、裁判手続を進めるためには相手方への送達を行うことが必須なのです。

送達に関する一般原則は民事訴訟法によって定められています。
送達の方法として、民事訴訟法上は交付送達(手渡しによる送達)が原則とされ、通常は、相手方の住所地宛てに、郵便による特別送達という方法(書留郵便の一種)により行われます。

つまり、裁判上の書類は書留郵便で配達されることになります。

このように、送達は書留郵便(の一種である特別送達)によって行われるわけですが、相手方が郵便を受け取らなかったらどうなってしまうのでしょうか。

ご存じのとおり、書留郵便はポストに投函されるのではなく、宛先にいる人間に手渡しされ、受領のサインや受領印を求められます。
このとき、受領を拒否すれば配達を完了することはできず、郵便物は発送者のもとに返送されます。
不在(または居留守)で受け取られないまま保管期間が経過した場合も同じです。

したがって、裁判所から送付された書類について、相手方が受領拒否をしたり居留守を使ったりした場合には送達が完了しません

さらに、上記の記事で説明した公示送達は、あくまで「相手方の住所が分からない場合」に認められる方法であって、「住所は分かるが受け取られない場合」には使えないのです。

 

付郵便送達

そこで、このような場合に備え、民事訴訟法第107条に「書留郵便等に付する送達」という方法が規定されています。
付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)といいます。

付郵便送達の方法で送達を行う場合、裁判所から改めて相手方の住所地あてに書類を書留郵便で発送しますが、この場合は発送した時点で(相手方がその後受け取らなくとも)送達が完了したものとみなされます

また公示送達の場合と同様、ある裁判手続において一度付郵便送達が行われると(例えば訴状の送達)、その裁判手続におけるその後の送達(例えば判決書の送達)も付郵便送達で行われます。

これは便利な制度です。
しかし、相手方が受け取らなくとも裁判の効力を相手方に及ぼすというものですので、この方法が認められるためには条件があります。

 

付郵便送達を行うための条件

条文上の条件は「前条(第106条)の規定により送達をすることができない場合」としか記載されていませんが、実務上は現地調査を要求されます。

公示送達の場合と同様に現地の状況を調査するわけですが、公示送達の場合は「相手方がそこに住んでいないこと」を調査するのに対し、付郵便送達の場合は逆に「相手方が確かにそこに住んでいること」を調査する必要があります。
そこにいるのに書類を受け取らないのだ、ということを示す必要があるからです。

建物の状況(郵便受けや表札など)や電気メーターの回り具合、近隣住民やマンションの管理会社などへの聴取り調査を行ったうえで、相手方が確かにそこに住んでいる(けど書類を受け取らない)ことを示す調査報告書を裁判所に提出します。
公示送達の場合と同様、実際にどこまでの調査を行うべきか、裁判所とも打合せをしながら検討することもあります。

調査によって付郵便送達で行うことが相当と判断されれば、相手方が書類を受け取らなくとも裁判手続を進めることが可能になります。


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