住宅建築市場の今後 建築実務セミナーに行ってみた
10月25日に開催された、日経アーキテクチュア主催の建築実務セミナー「仕事が取れる 設計者のための”不動産”特別講義」に行ってきました。
主に設計者向けのセミナーなので参加者のほとんどが建築士だったようですが、仲介業者や不動産オーナーの方もいたようです。参加者は100人くらいでした。
法律関係の人がほかにいたかは分かりません…
内容はこんな感じ。
講師の方はこちら。
(日経BP社のwebサイトから抜粋)
実際の内容は上記の見出しとは若干違っていましたが、全体の軸となる内容は「いかに顧客のニーズに合ったプランを提示できるか」です。
その「顧客のニーズ」ですが、今回取り上げられていたのは主に、相続対策(法務・税務)の観点と、賃貸事業の収益性の観点(建替え・リノベのどちらを選ぶか)という2点でした。
これらの点を勉強し、顧客のニーズを把握したうえで提案しましょう、ということですね。
1/3くらいは法務(民法の相続の規定)の話でしたが、残りの2/3は自分にとって新しい話で刺激的でした。
(相続税の特例の話は複雑でした…信頼できる専門家との付き合いの大切さを学びました)
特に、前提論として解説されていた、日本の住宅マーケットの特殊性の話が面白かったです。
主にアメリカやドイツとの比較でしたが、日本では、単位人口当たりでみると、新築着工数が多く(アメリカの約2.6倍)既存(中古)住宅の取引数が非常に少ない(アメリカの約1/16)だそうです。
「日本人は新築好き」という話を聞いたことがありますが、アメリカと比べてもこうも違うのですね。
これから高齢化・人口減の時代を迎えるに当たって、建築業者としては、新築マーケットを当てにしていてはいずれ破たんすることは必至で、既存住宅のリフォーム・リノベーションに舵を切らなければ未来がないのだ、というメッセージだと受け取りました。
また、賃貸事業の収益性の話では、建替えかリノベーションかの選択の場面で、さまざまなシミュレーション結果を見れたのが面白かったです。
事業全般にいえることですが、賃貸事業でも「損益予測を見ればそんなに問題はないが、キャッシュフローでは数年後に破たんする」という事態は避けなければなりません。
シミュレーションの結果は概ね、キャッシュフローベースでは建替えはきつく、リノベの方が安定するというものでした(ただし最終的な利益は建替えの方が多い)。
特に、これから賃料が下がるであろうことを考えると、建替えするなら超都心のRCでない限り事業として成り立たないだろう、という結果は納得がいきます。
(個人でやる場合ね)
安易に建替えを勧める業者には気を付けましょう、という注意点にも納得です(笑)
会計面でも信頼できる専門家の助けを得ることは必須ですね。
このように、全体的には「建替えよりもリノベ」という方向での話でした。
耐用年数の問題から、融資を受けるのは難しくなりそうだというデメリットはありますが(審査が強気の、利率4.5%の某銀行とかなら別かもしれませんが)、この点が変わっていけば(あるいは変わらなくとも)建築業界はリフォーム・リノベーションに力を入れる方向に変わっていくのかな、というのを強く感じました。
法的トラブルの内容をみても、リフォーム・リノベーション工事の問題には、新築工事にはない特殊性があります。
設計・施工業者をバックアップする立場の弁護士としても、リフォーム・リノベーションの方に力を入れていく必要があるな、と思いました。