駐車場にマンションを建設したいときはどうする? 駐車場の立退き(明渡し)請求について

空き地となった土地をひとまず月極駐車場として貸し出していた。
しばらくして資金調達の話が付いたので、そこにマンションを建てることに。

さて、利用者の方には申し訳ないけど、駐車場の利用契約を解約して明け渡してもらおう。管理会社の話では2か月あれば明渡しは完了するはず。
ところが2か月後、管理会社から連絡がある。「一部の方が強硬に明渡しに反対しておりまして…」「自動車や残置物を撤去してくれなくて…」

そう言われても、マンションの請負契約の話は進んでしまっているし、今さらどうすれば…

――という相談を受けることがあります。
マンション建設の場合もそうですが、土地を売却する予定の場合には引渡し期限の問題もあります。

きちんとした業者が間に入ってあらかじめ計画を立ててくれれば問題ないのですが、先の見通しを甘く考え契約を進めてしまうと、思わぬところで違約金が発生したりなど予想外の事態になりかねません。

駐車場といえども賃貸物件であることには変わりません。
明渡しを求める場合には、手続を踏まえて慎重に計画を進める必要があります。

今回は、そんな駐車場の立退き(明渡し)請求についてです。

適用される法律

土地の賃貸借といえば借地借家法を思い浮かべる方も多いと思いますが、駐車場の賃貸借の場合には借地借家法は適用されません。

借地借家法は、あくまで建物の所有を目的とした土地の賃貸借(または建物の賃貸借)について適用される法律です。
ご存じのとおり、借地借家法が適用される場合には、立退きにの前提となる解約が認められる条件が、所有者にとってかなり厳しくなっています。

これに対して駐車場の賃貸借においては、借地借家法ではなく民法が適用されます。
そのため、借地借家法よりはその厳しさは多少緩和されます。

基本的な解約のルール

通常の、期間の定めがある契約では、次回の更新をしなければ契約期間満了時にその契約を終了させることができます。
もし契約書において「本契約を更新しない場合には、契約終了の●日前までにその旨を通知する」などと記載があれば、それに従います。

以上が原則ですが、標準的な契約書ではさらに「当事者双方は、相手方に対して1か月前に解約の申入れを行うことにより、本契約を終了することができる。」という条項が入っていますので、これにより解約することができます。

今後争われることが予想されたり、期日までに確実に立ち退いてもらう必要があったりするケースでは、念のためこの申入れを内容証明郵便で行うこともあります(通知を送ったという証拠を残すため)。

ところで、長期間にわたって利用され続けている場合では、更新手続をきちっと行っていないこともあります。
契約書に自動更新の条項が入っていれば問題ありませんが、標準的な契約書ではこの条項が入っていないことが多いです。
この場合、契約期限後も駐車場の利用が継続されており、所有者がそれ知りながら異議を申し出なかったときは、法律上、契約は更新されたものとされます(民法619条1項。これを「法定更新」といいます)。

この場合の解約申入れについては民法617条第1項第1号が適用され、解約を申し入れてから1年後(あるいは更新後の契約期間の満了のいずれか早い方)に契約が終了することになります(民法第619条第1項)。

なお、めったにないですが、当初から契約期限を定めなかった場合には先に述べた民法617条第1項第1号により、解約を申し入れてから1年後に契約が終了します。

以上のいずれかの規定により契約が終了すれば、法的に立退きを求めることが可能となります。

注意すべきケース

原則は以上のとおりですが、注意すべきケースもあります。

例えば、土地の賃貸借で、店舗部分の土地とその店舗の利用客用の駐車場部分の土地をセットで貸していたようなケースです。

この場合、店舗部分の土地には借地借家法が適用され解約について厳格なルールが適用されますが、駐車場部分の土地には前述した民法のルールが適用されるとも思えます。

では、駐車場部分の土地については簡単に解約できるかというと、多くの裁判例では認められていません。
それは、この場合はいわば駐車場部分は店舗部分の土地と一体として賃貸されているとみられるからです。

スーパーと隣接する駐車場を賃貸したケースを想定してみれば分かりやすいですが、駐車場部分だけ(借地借家法が適用される店舗部分と比較して)簡単に解約できるとなれば、店舗部分に適用される借地借家法の規定が実質的に骨抜きになってしまうからです。

このケースのように、原則どおりにはいかない場合もありますので、立退きを前提とした土地の売買や建物の建築にあたっては、綿密な計画を立てて臨む必要があります。