不動産の管理

借地上の建物の再築・改築には所有者の承諾が必要? 勝手に建て替えてしまった場合のペナルティや承諾料の相場など

投稿日:


借地上に家を建てて住み続けていたが、そろそろ家も古くなってきたので建て替えたい。あるいはリフォームしたい。
この場合、地主の承諾を得る必要はあるのでしょうか?

借地を利用する権利はこちらにあるわけだし、建物は自分の所有なのだから勝手に立て替えても問題ないような気もしますね。

しかし、通常は契約書に「借地上の建物を増改築する場合は地主の承諾が必要」と書いてあるはずです。

では、地主が承諾してくれない場合はどうすればよいのでしょうか?
勝手に建て替えてしまうとペナルティはあるのでしょうか?

今回は、そんなお話です。
(特に断りが無い限り、現行の「借地借家法」を前提にしています。)

承諾が必要な「増改築」とは?

地主がどうしても建替えを承諾してくれないので、賃借人が勝手に工事を行ったという事例を考えてみます。
この場合、地主は当然契約違反を理由に、賃貸借契約を解除し土地の明渡しを求めてきます。

この裁判では、まず最初に「賃借人が行った工事が、契約上承諾が必要とされている増改築にあたるかどうか」が問題となります。

これは、契約書上は一切の増改築につき承諾が必要であると読めるような規定であったとしても、実際に一切の増改築が禁止されるわけではないからです。

例えば、壁の一部にひびが入ったり、窓枠が壊れたりしたりしたような小規模の修繕にあたるような行為は、契約書上の「承諾が必要な増改築」にあたらず、これらの工事は無断で行っても問題ないと解釈されています。
契約書に「一切の増改築はダメ」と書かれてあっても、このように解釈されます。

ただ、建替工事の場合にはまず承諾が必要な増改築にあたりますので次の問題に移ります。

借地契約の最初の更新前に建替えをした場合

この場合、無断で建替えをしてしまうと、原則として地主から賃貸借契約を解除されることになります。

もっともこれには例外があり、最高裁の判例では「増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないとき」は、例外的に、地主からの解除が認められないとされています(最高裁昭和41年(1966年)4月21日判決)。

しかし、この例外が認められるのは、全面的な建替えではなくあくまで一部のリフォームに過ぎない場合や、老朽化した建物の応急処置といえる程度の改築であり、建物を全面的に建て替えるような場合には認められていません。

したがって、建物を無断で建て替えてしまった場合は、地主からの解除が認められる可能性が高いといえます。

借地契約の最初の更新以降に建替えをした場合

1回目の更新後では、適用される規定が変わります。

1回目の更新以後に無断で建替えを行ったときは、地主は契約の解約申入れを行うことができます。
そして、解約申入れから3か月後に契約は終了します(借地借家法第8条第2項・第3項)。
(※ただし、一度現在の建物を解体する場合で、かつ新しく建てた建物が契約の残存期間を超えて存在するときに限ります。)

※旧借地法の場合(現時点では(早くとも平成34年(2022年)までは)全てこちらが適用されます)

現時点で適用されることになる旧借地法の下では(※)、上記の申入れの制度が無いため、前項の「最初の更新前に建替えをした場合」と同様です。

地主がどうしても建替えを承諾してくれない場合

以上を見ると、承諾が得られないからといって建替えを強行してしまうのは、やはりリスクが大きいといえます。

それでは、地主がどうしても建替えを承諾してくれない場合にはどうすればよいのか。

・初回の更新前の建替え

借地借家法第17条第2項に基づき、裁判所に増改築(再築を含む)の許可を求めることができます。裁判所の許可決定がなされれば、これが地主の承諾の代わりとなります。

この申立てがなされた場合、裁判所はその判断にあたり「借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない」(第4項)とされています。

また、第3項により裁判所は「当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる」とされています。
これがいわゆる承諾料です。

裁判所の決定では、最終的に「平成●年●月●日までに●円を支払うことを条件として、建替えを許可する」という形になることが多いです。

ちなみにこの承諾料の相場は、地価の3%程度といわれています。
事情によって異なりますが、多くの場合2%~5%の範囲に収まります。

・初回の更新以降の建替え

借地借家法第18条に基づき、裁判所に再築の許可を求めることができます。
ただし、この場合は前期と異なり再築をするのに「やむを得ない事情」が必要とされており、ハードルが上がります。

その他の点は、概ね前記と同じです。

※旧借地法の場合(現時点では(早くとも平成34年(2022年)までは)全てこちらが適用されます)

現時点で適用されることになる旧借地法の下では(※)上記の規定の適用が無いため、前項の「初回の更新前の建替え」と同様です。

結論

どうしても建替えの承諾を得られない場合には最終的に裁判という方法もありますが、やはり交渉で承諾を得るのが基本です。

交渉の中で「承諾料」の金額が大きな争点となりますが、これについては、裁判となった場合にどのように判断されるかを予測したうえで交渉に臨むことが重要かと思います。

なお余談ですが、承諾を得る場合の注意として一点。
一般的な用語としての「改築」とは異なり、建築基準法での「改築」は、ざっくりいうと従前の建築物を取り壊して、これと位置・用途・構造・階数・規模がほぼ同程度のものを建てることを意味します。

そこでこの理屈によって、リフォームの意味での「改築」の承諾を得たからのをいいことに建替えを行うことは、通常は認められません(東京地裁平成21年(2009年)11月26日判決等)。

(※)適用される法律について

なお、適用される法律について少々補足。

現行の借地借家法は平成4年(1992年)8月1日に施行されましたが、原則としてそれ以前の契約にもこの法律が適用されます。

もっとも、前述した点(初回の更新以降の再築に関する規定)などいくつかの規定については、上記施行日以前に成立した借地権については従前の法律(旧借地法)が適用されるとされていますので、注意が必要です。

ちなみに「早くとも平成34年(2022年)までは旧法が適用される」と記載したのは、現行の借地借家法では土地賃貸借契約の最短期間が30年とされている(第3条)ので、「初回の更新」が早くとも平成34年(2022年)となるためです。


-不動産の管理

Copyright© 関口法律事務所 , 2018 All Rights Reserved.