パーキング・メーターの300円の未納は、駐車監視員は取り締まれない?

前回は、パーキング・メーターの使用方法と違反(罰則)について説明しました。

その中で「未納のまま59分停め続けた車は摘発されない一方で、ちゃんと300円を払って停めた車が制限時間を1分過ぎただけで摘発された」といった話を紹介しましたが、実は、これは現実に起こり得る話です。

今回は、なぜこのようなことが起こるのか、道路交通法の規定に基づいて説明します。

駐車監視員による取締り

前提として、今回の記事では駐車違反の摘発のうち、駐車監視員が行う放置車両確認標章の取付けについて取り上げます。

違法駐車している車両に、駐車監視員がこの図のような黄色のシール(放置車両確認標章)を貼り付けているのを見たことがあるかもしれません。

神奈川県警察のwebサイトより)

今回は、警察官ではなくこの駐車監視員による取締りに限って説明します。

 

駐車監視員は何をするのか

駐車監視員とは

前記のような放置車両確認標章の取付け(黄色のシールを貼ること)は本来は警察官が行うものですが、道路交通法(以下同じ)51条の8により、警察署長はこれを民間の会社に委託することができます。

※51条の8第1項
 警察署長は、第五十一条の四第一項に規定する放置車両の確認及び標章の取付け(以下「放置車両の確認等」という。)に関する事務(以下「確認事務」という。)の全部又は一部を、公安委員会の登録を受けた法人に委託することができる。

この会社に所属し、実際に放置車両の確認および標章の取付けを行う従業員が駐車監視員です。

※ちなみに標章の様式は下記のとおり(道路交通法施行規則7条の5)。

駐車監視員が行う事務

以下、すこし複雑な話になります。

上記の条文によれば、駐車監視員が行うのは「第五十一条の四第一項に規定する放置車両の確認及び標章の取付け……に関する事務」(※太字筆者)とされています。

「放置車両」とは

そこで51条の4第1項を見ると、「放置車両」とは「違法駐車と認められる場合における車両……であつて、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるもの」とあります。

「違法駐車」とは

さらに、「違法駐車と認められる場合」については51条1項に規定されており、パーキング・メーターとの関連でいえば、49条の3第2項または3項に違反していると認められる場合をいいます。

※51条1項では「車両が第四十四条第一項、第四十五条第一項若しくは第二項、第四十七条第二項若しくは第三項、第四十八条、第四十九条の三第二項若しくは第三項、第四十九条の四若しくは第四十九条の五後段の規定に違反して駐車していると認められるとき、又は第四十九条第一項のパーキング・チケット発給設備を設置する時間制限駐車区間において駐車している場合において当該車両に当該パーキング・チケット発給設備により発給を受けたパーキング・チケットが掲示されておらず、かつ、第四十九条の三第四項の規定に違反していると認められるとき(第五十一条の四第一項において「違法駐車と認められる場合」と総称する。)」(※太字筆者)とされています。

だんだん複雑になってきましたが、前回の記事で紹介したとおり、49条の3で定めるパーキング・メーターに関する違反類型はこのようなものでした。

  • 2項 制限時間違反
  • 3項 指定方法(供用時間・白線内)違反
  • 4項 不作動(直ちに作動させない)違反

このうち、上記の「違法駐車と認められる場合」には2項と3項は含まれる一方で、4項は含まれていないのです。

 

駐車監視員は不作動違反(未納)を取り締まることができない

これを簡単にまとめると、パーキング・メーターに関してはこういうことになります。

  • 駐車監視員が取り締まるのは「放置車両」
  • 「放置車両」=「違法駐車」かつ「運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態」
  • 「違法駐車」=制限時間違反・指定方法違反(不作動違反は含まない)

つまり、駐車監視員は、制限時間違反については取り締まることができる一方で、不作動違反(直ちに作動させない(300円を入れない)違反)については取り締まることがそもそもできないのです。

※ちなみに、上記のとおり「放置車両」の定義に「運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態」が入っていることから、制限時間違反の場合であっても運転者が車内にいる場合には駐車監視員は取り締まることができません

そのため、冒頭に出てきた話のように「60分を超えたら取り締まられるのに、未納のままの車は取り締まられない」ということが起こるわけです。

 

放置車両の取締りに限った話であることに注意

ただし、以上の話は、放置車両の確認事務という一般の違反行為の場合とは異なる特別な取締り方法に限った場合の話であることに注意が必要です。

繰り返しになりますが、49条の3で定めるパーキング・メーターに関する違反類型である、

  • 2項 制限時間違反
  • 3項 指定方法(供用時間・白線内)違反
  • 4項 不作動(直ちに作動させない)違反

は、いずれも刑事罰(罰金)や違反点数・反則金といった罰則が定められています。ただ、そのうち不作動違反については駐車監視員が黄色のシールを貼るという形では取り締まれない、というだけです。違反行為であることには変わりないので、一時停止違反など一般の違反行為と同様、警察官が行う通常の取締り方法の対象ではあります。

いうまでもないことですが、駐車監視員に取り締まられないからといって違反行為(犯罪です)を行うべきではありません。お金はちゃんと入れましょう。