パーキング・メーターの300円は何のお金? 払わないとどうなる?

以前、雑談の中で「パーキング・メーターの300円は何のお金なのか?」という話をしたことがあります。

具体的には「メーター前の白枠に車を停めて3、4分の間に人を降ろし、すぐ出発した。メーターには『未納』のランプがついたものの300円を入れずにそのまま出たが、問題ないだろうか?」という話。

仮にこの300円(パーキング・メーターの手数料)が賃料や利用料のようなものだとすれば、3、4分とはいえそこに停めたのなら払う必要がありそうです。

では、あの300円は一体何のお金なのか、そして払わないと法律上どうなるのか。今回はそんなお話です。

なお、以下はパーキング・メーターについてのみの説明です。パーキング・チケット(シールを貼る方式)の場合は規制内容が異なりますのでご注意ください。

300円は賃料ではなく免罪符?

先に結論をいってしまうと、実はこの300円は駐車スペースの賃料や利用料のようなもの(駐車スペースを占有することの対価)ではありません。

後述のとおり、この300円は路上駐車が適法となるための要件であり、ある意味「免罪符」ということができます。

逆に、駐車したにも関わらず直ちに300円を払わない場合は違反となり、駐車違反と同様の罰則を科されます。

ただし、罰則が適用され得るのは「駐車」の場合のみ。「停車」の場合には適用されないので、「未納」のランプが点いても300円を払う必要はありません。

 

パーキング・メーターの使い方に関する規定(法49条の3)

ここで、パーキング・メーターの使い方に関する道路交通法(以下「法」)の規定のうち、重要なものとして法49条の3の規定を見てみます。

標識に従う(3項)

まず、駐車スペースの利用に際しては標識などにより指定された部分及び方法に従わなければなりません。

※法49条の3第3項
 車両は、時間制限駐車区間においては、駐車につき道路標識等により指定されている道路の部分及び方法でなければ、駐車してはならない。

具体的には、供用時間(利用可能な曜日・時間帯など)や、駐車してよいスペース(白線内)などが場所ごとに指定されていますので、これらを守らなければなりません。

違反した場合は駐車違反と同様の罰則を科されます。

直ちにお金を入れてメーターを作動させる(4項)

次に、駐車したら直ちにパーキング・メーターを作動させなければなりません。

作動させる方法は「当該パーキング・メーターに表示されている方法により」とされ(道路交通法施行令14条の7第1項)、具体的には、下記の写真の例のように手数料を入れる必要があります。

※法49条の3第4項
 車両の運転者は、時間制限駐車区間において車両を駐車したときは、政令で定めるところにより、……パーキング・メーターを直ちに作動させ……なければならない。
※道路交通法施行令14条の7第1項
 法第四十九条の三第四項の規定により車両の運転者がパーキング・メーターを作動させるときは、当該パーキング・メーターに表示されている方法によりこれを作動させなければならない。

パーキング・メーターの記載(例)

違反した場合は駐車違反と同様の罰則を科されます。

つまり、駐車したら直ちに300円を入れないと違法になります。
なお、法令用語でいう「直ちに」とは「すぐに・即座に」を意味し、具体的には(客観的に)それが可能になった時点をいいます。

決して「駐車して60分以内に300円を入れればOK」ということではありません。

制限時間を守る(2項)

最後に、あらかじめ定められた制限時間を超えて駐車してはなりません。

※法49条の3第2項
 車両……は、時間制限駐車区間においては、当該駐車につき……パーキング・メーターが車両を感知した時……から、それぞれ道路標識等により表示されている時間を超えて引き続き駐車してはならない。

制限時間は、場所により20分や40分といった例もありますが、60分とされている例が多いように思います。

制限時間を超えて駐車し続けた場合には、駐車違反と同様の罰則を科されます。手数料(300円)を入れたかどうかにかかわらず、制限時間を超えた時点で違法となります。

 

「停車」の場合は300円を払う必要なし

ところで、以上の規定は全て「駐車」に関するもので、「停車」(人の乗降のための停止など)については適用されません(法49条の3第1項)。

※法49条の3第1項
 時間制限駐車区間における車両の駐車……については、第四十四条から第四十八条までの規定にかかわらず、この条から第四十九条の五までに定めるところによる。

※「停車」の定義は法2条1項18号・19号により規定されていますが詳細はここでは割愛します。

※法2条1項19号では「停車」とは「車両等が停止することで駐車以外のものをいう。」とされ、
 同18号では「駐車」とは「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。」とされています。

したがって、例えば人を降ろすために停車しただけであれば300円を払う必要はありません(なお、そのメーター前が駐停車禁止の場所であったとしても同様です(法49条の6))。
冒頭に紹介した話では、駐車ではなく停車に当たるので、メーターに「未納」のランプが点いたとしても300円を払う必要はないというわけです。

※法49条の6
 車両は、第四十九条の三第三項の道路標識等により車両が駐車することができる道路の部分として指定されている時間制限駐車区間の第四十四条第一項各号に掲げる道路の部分においては、同項の規定にかかわらず、停車することができる。

仮に300円が賃料や利用料のようなものであれば停車の場合にも支払義務が生じますが、そうではないのです。このことからも、300円はあくまで路上駐車を適法とするために必要なお金にすぎない免罪符であるといえます。

 

未納は摘発されにくいという噂について

なお、制限時間超過の場合と比べて、手数料の未納の場合は摘発されにくいという話を聞いたことがあるかもしれません。

巷にあふれる噂話でも、「未納のまま59分停め続けた車は摘発されない一方で、ちゃんと300円を払って停めた車が制限時間を1分過ぎただけで摘発された」といったものがあります。

これはどういうことなのでしょうか。次回、詳しく掘り下げてみます。