水道管はどこからどこまでが個人の所有になるの? 法律上の根拠とともに解説

水道は、道路下などにある水道管から自宅の蛇口までつながっていますが、どこまでが公共のもの(自治体の所有)で、どこからが個人の所有になるのでしょうか。

今回は、法的な根拠とともにこの点を解説します。

 

一般的な解説の例

これは小田原市の例ですが、概ねどの自治体でもこのような図で解説されているかと思います。

小田原市のサイトからお借りしました。

このような図で、道路内の水道管(本管)から自宅内の蛇口など最終的に水が出てくる部分まで(水道メーターは除く)が、個人の所有であると説明されています。

しかし、自分の敷地を越えて、道路内にある部分まで個人の所有となるのか疑問に思ったことがあるかもしれません。

 

法的根拠

では、関係法令の規定はどのようになっているのでしょうか。

水道法の規定

まず、水道法3条9項・11項には以下のとおり定められています。

水道法
第3条(用語の定義)
9 この法律において「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。
11 この法律において「給水装置工事」とは、給水装置の設置又は変更の工事をいう。

上記のとおり、水道法にいう「給水装置」とは、

  • 需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管(道路中にある本管のことです)から分岐して設けられた給水管
  • これに直結する給水用具(水栓(蛇口)などのことです)

をいいます。

要するに、建物内の蛇口などから、道路内の本管に接続するまでの部分の給水管が、「給水装置」に含まれることになります。

※なお、ここでいう水道事業者とは、厚生労働大臣の認可を受けて水道事業を行う者で、通常は市町村(東京都の場合は主に都)の水道局です。

では、その給水装置の所有権は誰にあるのでしょうか。

給水条例などの規定

まず、水道法14条1項では、水道の供給に際して料金や工事の費用負担などについて、各水道事業者において供給規程を定めなければならない、とされています。

水道法
第14条(供給規程)
1 水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない。

これを受けて、例えば東京都では「東京都給水条例」を定めています。
この条例で、料金の詳細など、平たくいえば水道供給の契約条件のようなものを定めています。

どこの自治体でも同様の条例を定めており、また内容はほぼ同一ですので、以下は東京都給水条例(以下「条例」といいます。)の例で解説します。

給水装置の設置や維持管理について

まず、条例5条により、給水装置を最初に設置する際(建物の新築の場合など)に行う給水装置工事については、原則としてその費用は設置者の負担とされています。
また、給水装置の修繕や撤去の費用についても同様です。

東京都給水条例
第5条(新設等の費用負担区分)
 給水装置の新設、改造、修繕又は撤去に要する費用は、当該給水装置を新設、改造、修繕又は撤去する者の負担とする。ただし、管理者が給水上特に必要があると認めた給水装置の改造又は修繕については、都がその費用の全部又は一部を負担する。

そのうえで、条例18条では、水道使用者等による給水装置の管理義務について定められています。

東京都給水条例
第18条(水道使用者などの管理上の責任)
1 水道使用者等は、善良な管理者の注意をもつて、水が汚染しまたは漏れないよう給水装置を管理し、異状があるときは、直ちに管理者に届け出なければならない。
2 前項の管理義務を怠つたため生じた損害は、水道使用者等の責任とする。

なお、ここでいう「水道使用者等」とは、実際に水道を使用する者や、給水装置の所有者などのことです(条例16条)。

設置者=最初の所有者

これらの規定のように、

  • 給水装置を設置や修繕する人は、原則として自らの費用で設置工事を行い、
  • その後は、自らの責任で(使用者とともに)、かつ自らの費用負担で給水装置の維持・管理をしなければならない

とされていることに加え、特に給水装置の各部分を分けて考えるような規定はありません(後述の水道メーターは除く)ので、給水装置の所有権は最初に設置した人(多くの場合建物の所有者)が取得することになります。

水道メーター(量水器)の所有権

なお、水道メーター(量水器)については以下のように定められています。

東京都給水条例
第14条(量水器の設置)
1 管理者は、給水するときは、使用水量を計量するため給水装置に都の量水器を設置する。ただし、管理者がその必要がないと認めたときは、この限りでない。
(以下略)

第19条
 水道使用者等は、善良な管理者の注意をもつて量水器を管理し、その量水器をき損し、または亡失したときは、都に、その損害を賠償しなければならない。

条例14条1項に「都の量水器」とあり、また、条例19条では量水器を毀損などした場合には都にその損害を賠償しなければならないとされていることから、量水器は都の所有である(個人の所有物ではない)ことになります。

まとめ

以上の規定のとおり、道路内の水道管(本管)から自宅内の蛇口など最終的に水が出てくる部分まで(水道メーターは除く)が、個人の所有であることになります。

 

道路下にある部分が漏水した場合

前記のとおり、水道メーターを除き、道路内の水道管(本管)から自宅内の蛇口など最終的に水が出てくる部分までが個人の所有ですから、その部分で漏水が起こった場合の修繕は、当然所有者個人が行わなければならないはずです。

しかし、冒頭の小田原市の図では、本管までの給水管のうち、道路中の漏水工事は市が行うものとされています。
また、東京都では、以下の図のとおり水道メーターから本管までの部分は水道局(都)が行うものとされています。
(この区分は自治体によって異なります。)

東京都水道局のサイトからお借りしました。

これはどういうことでしょうか。

実は、(東京都の例では)先ほどの条例5条では、給水装置の修繕などはこれを行う者の負担とされていますが、例外として「ただし、管理者が給水上特に必要があると認めた給水装置の改造又は修繕については、都がその費用の全部又は一部を負担する」とされています。

道路中の工事の場合には道路を掘削したりする必要があることや、公共への影響が大きいと考えられるために、このような場合には都が工事を行うこととされているようです。
そのため、東京都の例では本管から水道メーターまで、小田原市の例ではそのうち道路敷地中の部分に限って、無償で工事を行ってくれるようになっています。

 

道路敷地の利用関係について

なお、道路中の給水管まで個人の所有物ということですから、給水管は他人の敷地を通っていることになります。
公道であれば、市町村などの敷地を利用することになります。

この利用関係はどうなっているのかというと、最初に設置した際に道路占用許可(道路法32条)を受けているはずです。
この占用許可に基づき、道路敷地を利用することができているのです。

なお、土地の賃貸借などと同様、一般的に道路占用に際しては占用料がかかるのですが、電気・ガス・水道のための占用については、各自治体の条例により占用料が免除されています。