宝くじの当選金も、離婚時の財産分与の対象になる? 宝くじで2億円を得た夫婦の話。

夫婦の一方が宝くじで高額の当選金を得た場合、その後夫婦が離婚したときには、その当選金は財産分与の対象になるのでしょうか。

結論からいうと、多くの場合、当選金は財産分与の対象になると考えられます。

この点について、財産分与の考え方や最近の裁判例などをご紹介します。

 

財産分与とは

財産分与の基本的な考え方について説明します。

財産分与とは、夫婦が結婚期間中に築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれに分配することをいいます。
実際には、財産を持っていない方が、財産をもっている相手方に対して財産分与の請求を行います。

財産分与として支払う金額について話し合うことになりますが、当事者同士の話合いでまとまらなければ、当事者の申立てによって家庭裁判所で調停が行われます。
調停の場でも話がまとまらなければ、審判となり、証拠などに基づき裁判官が金額を決めます。

 

金額の決定方法

財産分与の金額を定めるあたっては、まずは財産分与の対象となる財産の範囲を画定して、次に分与の割合を決定して算出されます。

どの範囲の財産が財産分与の対象となるか

財産分与の対象となるのは、夫婦が結婚期間中に得た財産です。

形式的にはどちらか一方のみが稼いだお金であったとしても「夫婦が得た財産」と判断されます。
例えば、夫がサラリーマンで妻が専業主婦であったとしても、夫がその収入を得ることができたのは妻のおかげでもあるという考え方により、夫婦が共同で得たものとされるのです。

また、そのお金で買った物(例えば不動産や自動車など)も、その名義にかかわらず夫婦共同の財産とされ、財産分与の対象になります。

他方、結婚前から持っている財産や、自分の親から相続を受けた財産など、夫婦が共同で得たとはいえない財産については、財産分与の対象にはなりません

分与される割合について

財産分与の対象となる財産が決まったとして、次に、それをどのような割合で分けるかが問題となります。

この点については、現在の裁判例を前提とすれば、原則は半分ずつ(5対5)になります(「2分の1ルール」と呼ばれています)。
この原則は、夫婦の一方がずっと無職であったとしても、それだけではこの原則は変わりません。

ただし、夫婦のどちらか一方が、その特別な才覚によって多額の財産を得た場合などには、例外的にこの割合を変更することがあります。
例えば会社経営者やプロスポーツ選手、芸能人など特別な職業で、かつ、非常に高額の収入を得ていた場合などには、割合が6対4とか7対3になることがあります。

もっとも、この例外が適用される場面はこのような特殊な事例に限られ、実際にはほとんどありません

 

宝くじのケース

では、夫婦の一方が宝くじを購入し多額の当選金を手に入れた場合には、財産分与はどうなるのでしょうか。

この点が問題となった最近の裁判例があります(東京高裁2017年(平成29年)3月2日決定)。
給与所得者である夫と専業主婦の妻という夫婦でしたが、夫が自分の小遣いの中から日々宝くじを買い続けていたところ、ある日2億円が当選しました。
夫は当選金の一部で不動産などを買いましたが、夫婦はその後離婚することになったという事例です。

当選金は財産分与の対象になるか

裁判所の決定では、前記の第1の問題点(どの範囲が財産分与の対象になるか)については、全額が財産分与の対象となるとされました。

宝くじの購入資金は、夫の小遣い、つまりもともとは夫の給料から出ていたためです。
夫の給料は夫婦の財産ですので、それをもとに買った宝くじも夫婦の財産になる、という理屈です。

分与の割合

次に第2の問題点(分与の割合)については、夫:妻=6:4とされました。
宝くじの当選はですから、何らかの特別な才覚によってお金を得たわけではありません。
とはいえ、夫がコツコツ買い続けていたことが当選につながったといえるため、夫の功績が大きいとして、2分の1ルールを適用しませんでした。

結論としては、残っている財産の4割を妻に分与することになりました。

注意点

もっとも、決定においては6:4とすることについて論理的な説明がなされているわけではなく、この数字は、その他の細かい事情も含め総合的に裁判官が判断して決めた(この夫婦の事例限りで決めた)ものなので、この割合が直ちに他の事例にも適用されるというわけではない、という点に注意が必要です。

例えば、夫がずっと宝くじをコツコツ買い続けていたというこの事例とは違い、結婚して初めて買った宝くじが当選したという事例であれば、結論は変わるかもしれません。

ただし、当選金が財産分与の対象になるという点については、他の事例でも同じ結論になるでしょう。

競馬の当選金のケース

なお、宝くじではありませんが競馬でたまたま大当り(1億9000万円)をしたケースもあります(奈良家裁2001年(平成13年)7月24日審判)。

この事例でも、当選金(および当選金で買った物)は財産分与の対象になるとされました。
ただ、分与の割合は夫:妻=2:1と判断されています。

この審判でも特に論理的な理由は示されていないため、2:1という結論は一般化できません。
競馬の場合は、純粋な運ではなく本人の才覚によるところがあるからかもしれませんが、何ともいえないところです。
(ただし、当選金が財産分与の対象になる、という点については間違いありません)

 

まとめ

まとめると、どちらか一方が得た給与などを元手にして宝くじを買って、当選金を得た場合には、当選金はほぼ間違いなく財産分与の対象になると考えてよいでしょう。

ただし、分与の割合については、2分の1ルールが適用されず6:4とか7:3になる可能性があります。