不動産売買契約における違約金(損害賠償額の予定)とは

違約金に関する契約条項は、原則として損害賠償の額を予定したものされます。

この条項により、相手方に債務不履行があった場合には、実際の損害額にかかわらず定めた額の違約金を請求できます。
逆に相手方からすれば、仮に実際の損害額がいくらであったとしても定めた額の違約金を払えばそれで足ります。

なお、事情により違約金の額が減額(または増額)されることがあります。

違約金とは損害賠償額の予定のこと

多くの場合、不動産売買契約書には「違約金」の条項が入っており、通常は売買代金額の1割程度~2割の金額が定められているかと思います。

では違約金とは法的にはどのようなものなのでしょうか。

違約金の法的意味

違約金に関する条項は、法的には損害賠償額を予定したものと推定(※)されます(民法420条3項)。
つまり、実際に発生した損害額にかかわらず損害賠償額をその金額とするという内容の合意です。

※推定とは、他の事情(例えば、賠償額の予定とは異なる趣旨の合意だったなどの事情)がない限りそのように扱う、という意味です。

民法420条(賠償額の予定)
1 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

違約金条項の機能

違約金条項は、損害賠償額の「金額をあらかじめ定めた」に過ぎません。
そのため、相手方に債務不履行があって初めて違約金を請求できます。

ただその場合、本来ならば請求する側が「実際にいくらの損害が発生したか」を立証しなければなりませんが、違約金の定めがあればその立証をせずとも違約金を請求できます。

また、実際の損害額が違約金の額より多かったとしても少なかったとしても、違約金として定めた金額を請求できます(ただし後述の例外あり)。

逆に債務不履行をした側からすると、必ずその金額を払う必要があるとはいえ、賠償金額を一定に抑えられる(想定外の損害が発生しても金額は上がらない)ことになります。

このように、違約金条項には立証の負担を軽減する機能とともに、当事者双方のリスクを一定にするというリスクヘッジの機能があります。

 

法律の規定による違約金の制限

宅建業法38条により、宅建業者が売主であり、かつ宅建業者以外の者が買主である(宅建業法78条2項)宅地・建物の売買契約においては、売買代金の2割を超える額の違約金を定めることが禁止されています(違反した場合には2割を超える部分について無効となります)。

また、消費者契約法9条1号により、事業者・消費者間の契約において「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超える額の違約金が定められた場合には、これを超える部分について無効とされます。

その他、割賦販売法や特定商取引法などにおいて制限がなされています。

 

公序良俗違反や過失相殺による減額

前述のとおり、契約で違約金の額が定められている場合には、実際に発生した損害がいくらであるかにかかわらず、損害賠償額は定められた額とされます。

公序良俗違反

もっとも、裁判例においては、現実に生じ得る損害に比べて著しく過大な額の違約金が定められた条項は、公序良俗に反し民法90条により一部無効となる(賠償額が減額される)場合があるとされています。
(逆に、著しく過少の場合に増額されることもあります。)

※なお、令和2年施行の民法改正の前は、民法420条1項の「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。」の後に「この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。」という1文がありました。

しかし、上記のとおり裁判例においては具体的な事情に応じて増減できると解されていたため、それを明確にするため後半の1文は削除されました。

過失相殺

また、最高裁を始めとする裁判例において、違約金の定めがある場合にも過失相殺(民法418条)の適用があるとされています。

そのため、債務不履行をされた側にも過失がある場合には、過失割合に応じて賠償額が減額されることになります。