前回は法定解除でしたが今回は約定解除について。

契約の規定による解除(約定解除)

当事者は契約において、解除権が発生する場合を自由に定めることができます(「甲または乙は、○○の場合には本契約を解除することができる」など)。

ローン特約(融資利用特約)

不動産売買契約において、買主が代金を支払うために住宅ローンなど銀行融資を利用する場合に使われる特約です。

一般的には、買主が融資を受けられなかった場合(審査に落ちた場合)には買主は契約を解除することができる(または当然に解除される)、という内容の条項になります。
併せて、次の条件が取り決められます。

  • 融資申込予定の金融機関
  • 融資金額、金利等の条件
  • 融資承認期日(融資の承認を得なければならない期日)
  • 契約解除期日(融資を得られなかった場合に解除できる期日)

また、ローン特約による解除の場合、通常は、買主は違約金等の損害賠償金を支払う必要はなく、また既に支払った金銭があれば返還されます。

手付解除

「手付」とは契約の成立に際し(あるいは契約成立後、代金支払前に)買主から売主に交付される金銭をいいます。

手付の交付に際し特段の意思表示がなければ、手付は解約手付(民法557条1項)としての性質を有するとされ、この場合、

  • 買主は、手付を放棄することにより
  • 売主は、手付を倍返しすることにより

契約を解除することができます。
何の理由がなくても(どんな理由であっても)手付を放棄・倍返しすれば解除できます。

ただし、解除ができるのは相手方が契約の履行に着手する前までであり、着手してからは手付による解除はできません(民法557条1項)。
そのため、訴訟において「履行に着手」したかどうかが争われた裁判例が多くあります。

なお、手付解除を行った場合には相手方に損害賠償を請求できません(民法557条2項)。

※宅建業者が売主となる売買契約(買主が宅建業者でない場合)では、宅建業法39条1項により手付の金額は売買代金の2割までとされています。
 また同条2項・3項により、当事者間で手付についてどのように合意しても必ず解約手付としての性質を有するとされています。

買戻し特約

あまり例がありませんが、売買契約の際に、一度売った物を売主が後日買い戻せる旨の特約をすることがあり、これを買戻し特約といいます。

法的には、売主が解除権を行使して売買契約を解除することで、売主が買主に代金を返還し、所有権を売主に戻すことになります(民法579条)。

約定解除の一種なのでここで取り上げましたが、実務で出てくることはあまりないので詳細は割愛します。

 

合意解除(解除契約)

以上の法定解除・約定解除とは異なり、当事者間の合意で契約を解除することを合意解除(解除契約)といいます。

解除(法定解除・約定解除)は当事者の一方の意思表示で行われるのに対し、合意解除は当事者双方の合意により行われる点で区別されます。

法律や契約による解除権がない場合に(あるいは解除権があっても行使せずに)、当事者双方が合意のうえ契約を終了させる場合に行われます。
契約後の新たな合意なので、覚書のような書面を取り交わすことが一般的です。