建築工事に関するトラブルで最も多いのが、工事の欠陥(瑕疵)に関するトラブルと、追加工事代金に関するトラブルです。

その理由は、大きく
 ①契約の内容が技術・法令などの面で専門的であるため、素人である顧客が内容を理解しにくい
 ②契約時に全ての工事内容を決定することが不可能であり、工事に入ってから変更・追加が入ることが避けられない
 ③そのため、契約後の追加工事の場面では書面などの記録が残されていないことが多い
の三点にあります。

そのため、建築工事のトラブルを防止するためには、可能な限り顧客の疑問点を解決するよう事前に十分な説明をしたうえで、工事内容の話合いについては記録をきちんと残しておくことが重要です。

トラブルの解決には、きちんとした説明をしたうえで双方(特に顧客)の理解を得ることが重要ですが、万一話合いがまとまらず裁判となる場合には、裁判所に対して説得的な主張を行うことが必要です。

工事の欠陥(瑕疵)に関するトラブル

施主さん側から「工事内容に問題がある」「希望していたのと仕様が違う」などと言われ、代金の支払いを拒否される形で問題となります。

法律用語でいう「瑕疵」とは、ここでは、工事の内容に存在する問題点のことをいいます。
工事内容に何らかの問題点(瑕疵)があった場合、施工業者としてはその問題点を修繕するか、あるいは修繕にかかる費用を賠償(損害賠償)しなければなりません。
施工業者が負うこの責任を「瑕疵担保責任」といいます。

建築請負工事において「瑕疵」があるとされる場合には、次の二つに分けられます。

1.工事内容が、通常求められているはずの品質を満たしていない場合
(建築基準法令が定める基準を満たしていない場合や、明らかな手抜き工事の場合など)

2.品質自体は問題ないとしても、施主が特に要望した基準を満たしていない場合
(最低限の基準は満たしているが、契約で定めた寸法どおりでない場合や、建具等の仕様が異なる場合など)

前述のとおり、工事にこれらのような瑕疵があるとされれば、施工業者はその修繕をするか、修繕にかかる費用を賠償(損害賠償)しなければなりません。

そして、一度工事が完成してしまうと修繕にかかる費用が多額になることも多くあります(躯体に瑕疵があった場合をご想像ください)。

そのため、そもそも工事に瑕疵が生じないように、あるいは瑕疵があったと主張されないように十分な対策(もちろん、上記1.は論外ですので上記2.に対する対策です)を行う必要があります。
具体的な対策例としては、こちらをご覧ください。

また、瑕疵があると主張されて代金の支払いを拒否されてしまった場合には、まずはそれが本当に法律上・判例上認められる瑕疵にあたるのかを検討する必要があります。

過去の裁判例を調査し、現場の状況・過去の打合せの内容など具体的事情に照らし合わせたうえで「仮に裁判になった場合にこちらが損害賠償責任を負うことになるかどうか」を正確に予測し、交渉を続けるか訴訟手続に移行するかを判断します。

実際に相手の主張が成り立たない場合(ただの難癖である場合も現実には多くあります)には、施工業者側としては粛々と代金の請求を行います。
こちらのミスであった場合には、早期に修繕や損害賠償の内容を確定し、双方の被害(紛争が拡大化・長期化する時間的・金銭的コスト)を最小限にとどめるように交渉を進めます。

追加工事代金に関するトラブル

建築の場面で瑕疵担保責任と並んで多いのが、追加工事に関するトラブルです。

打合せをもとに設計していても、いざ工事を始めてみると現場の状況などにより修正や変更が必要となることがあります。
また、具体的に工事が進んでくると施主さんのイメージが湧き、追加・変更を希望されることもあります。

追加変更工事はサービスで行う場合もありますが、施主さんの都合で必要になったり、当初予想しえなかった事情で追加・変更が必要となったりした場合には、追加代金を頂くことになります。
もちろん、事前に施主さんには追加代金について了承してもらっているので、問題はないはずです。

しかし、実際には、代金の支払時になって「そんな工事は頼んでいない」「納期が遅れたのだからこの程度のサービスは当然だ」「もともとの設計が悪かった」などの理由で、追加代金を支払わないケースがあります。

 

このようなケースの根底には、コミュニケーション不足からくる相互不信があることが多いです。
互いに「言わなくても分かってくれるだろう」という思い込みから、施主側は「この程度の工事はサービスだろう」と思い、業者側は「当初の設計にない工事だから、追加料金が発生するのは理解しているだろう」と思ってしまうため、後でこじれてしまうのです。

追加工事の問題は、多くの場合「言った」「言わない」の問題になってしまうため、訴訟になると立証が難しいのが現状です。
(訴訟では、業者側が、追加工事の内容及び代金に関する合意を立証する必要があります)

そこで、追加・変更工事に関するトラブルを防ぐため、なるべく合意の内容を残しておくことが重要です。
必ずしも合意書面を残すことができない場合も多いとは思いますが、他の証拠により合意を立証することも可能ですので、現状どのような証拠が使えるか、あるいはこれからどのような証拠を残せばよいかなどについて、対策を行います。